BLACKALICIOUS “BLAZING ARROW”

BLACKALICIOUS、MCAに移籍しての待望の新作だ。ソウル/ファンク色の強いCHIEF XCELのトラック、ポジティヴで意識の高いGIFT OF GABのライム。前作に於いて確立されたこうした方向性と高い音楽性は、本作で更に推し進められている。

GIFT OF GABの成長振りがまずは聴き所だ。冒頭から凄まじいライム・ストラクチャーを聴かせる”BLAZING ARROW”、ワックMCを焼き尽くす”PARAGRAPH PRESIDENT”、CUT CHEMIST操るドラム・ブレイクをGIFT OF GABが凄まじいフロウで見事に乗りこなす”CHEMICAL CALISTHENICS”などでマイク・スキルをストレートに披露。ポジティヴな”GREEN LIGHT”、ラヴ・ソング”NOWHERE FAST”、ノスタルジックな”MAKE YOU FEEL THAT WAY”、権力批判を繰り広げる”BRAIN WASHERS”、RAKAAとGIFT OF GABが熱く語り合う”PASSION”辺りは真骨頂。フロウの幅も広がっているし、味わい深い。

CHIEF XCELが手掛けるサウンド面だが、今作では生楽器を多用し、ネオ・クラシック・ソウル的な肌触り。基本的な路線に変化はないものの、随分と可愛らしい”BLAZING ARROW”、やたら大袈裟な”THE SKY IS FALLING”の2曲は新機軸を感じさせる出来。全編を一貫して貫くファンキーな音像は、前作から確実な進化。曲構成もより凝っていて、唸らされる。

本作が前作と大きく違う点を挙げるとすれば、外部からのゲストが多数参加している点だろう。個人的には、SAUL WILLIAMSが参加した大作”RELEASE”に注目したい。人間性をディープに表現した内容も彼ららしいし、素晴らしいポエトリー・リーディングを披露するSAUL WILLIAMSの存在感には圧倒される。間違いなくハイライトだ。ただ、期待していた元RAGE AGAINST THE MACHINEのフロント・マン、ZACK DE LA ROCHAの参加はガヤ程度のモノで、これは少しガッカリ。

生楽器の比重が増し洗練された印象が強くなったため、前作にあった土臭さが希薄になった点は寂しいが、彼らの音楽に迷いは無い。前作には及ばないものの、素晴らしいアルバムになっている。お勧めだ。