NECRO “I NEED DRUGS”

ヒップホップ発祥の地、ニューヨークで生まれた変態的MCの代表格と言えば、KOOL KIETHが多くの人の頭に浮かぶだろう。いまやある種天才と崇められる彼に代わって、新たな変態キングの座に名乗りを上げたのが、NECRO。プロデュースは勿論、エログロ・ギャングスタ映画の主役まで務める彼のデビューアルバム。

古くからのヒップホップリスナーにとって、最も笑えるのが”I NEED DRUGS”だろう。LL COOL Jのクラシック”I NEED LOVE”を思いっきりパクッた曲で、トラックも同じ。彼女に対する切ない思いを歌ったオリジナルを、ヤク中の曲に。最高!”HOE BLOW”でも、オールドスクールへのリスペクトが垣間見れる。ココでは、B.D.P.のクラシック・ラインをサビに。「お前のマ*コはいい感じ/俺のチ*ポも準備万端」と、強烈な替え歌で、KRSが聴いたらどういう顔をするだろう、と心配になる。”GET ON YOUR KNEES”では、DIONNE WARWICKのラヴソングをフェラ・ソングに。「ヨーDIONNE、俺に何してくれる?」と言うNECROに続いて、「貴方のためにひざまずくわ」というヴォーカル・サンプルを挿入。とりあえず、女性の前では聴けません。”S.T.D.”にいたっては、やたら純情に女を家に招きいれたと思ったら、ボコボコにして犯りまくる。女をレンチで殴ったら駄目でしょ。最後には説教までかます。

エロモノ以外でも、「お前の手首とクリトリスを切り刻む」とか、スプラッターさながらの描写の連続。セックスに暴力だけがNECROでは無くて、EMINEMを強烈にディスした”I’M SICK OF YOU”、ヒップホップ・シーンについてライムした”UNDERGROUND”なんてのもある。ゴキブリの事を、その起源から延々と説明する”COCKROACHES”も病んでいる。「一回間違って米と一緒に食っちまった/腹減ってるとゴチャゴチャ考えねえモンだぜ」だそうです。2曲で参加したNON PHIXIONのILL BILLも好演していて、とくに”YOU’RE DEAD”での入り方なんかはドープだ。

病んでる部分ばかり強調した気がするが、基本は押さえてるし、ビーツもタイト。フリースタイルを聴けば分かるが、NECROのスキルも相当なモノだ。誰にでもお勧めできる類のアルバムではない(歌詞的に)が、個人的にはかなり好き。とりあえず、意味分からずにこれを聴いてる女性がいたら、教えてあげましょう。