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オムニバス “8 MILE”

言わずと知れた、EMINEM初主演映画”8 MILE”のサントラ。今回は、SHADY RECORDS所属アーティストのお披露目ボーナス・ディスク付きヴァージョンをレビュー。

映画同様、サントラの主役も当然EMINEM。まず、アルバムのオープニングを飾る先行シングル”LOSE YOURSELF”が最大の聴き所。”人生に一度はチャンスは来る、逃すな”って感じの、EMINEMにしては珍しくポジティヴなメッセージ。ハングリーなMCの心情描写など、”STAN”以来の傑作と言って良い。ドラマティックな自作のトラックもドープだ。表題曲”8 MILE”にしても、ラストの”RABBIT RUN”にしても、公式通りの出来だが、ドープな事に変わりは無い。疎外感と反抗心が滲み出るライムしかり。

自身のレーベルSHADY RECORDSの面子の売込みにも抜かりは無い。やはり、と言うべきか、EMINEM程の逸材がそうそういる訳も無く、プロダクションにも恵まれず、凡庸な出来。”HOW TO ROB”でシーンの顰蹙を買った50 CENTなどは、キャラ的にいかにも、といった感じだが。OBIE TRICEは、ボーナス盤に収められた”RAP NAME”がナカナカ良いが、その他のアーティストは何処にでもいそうなタイプ。SHAUNTAの”CALIFORNIA”なんて、WARREN Gの出来損ないクローンみたい。

更にヒドイのが外部アーティストの曲で、殆どマトモなのがない状態。JAY-Z、XZIBIT、NASが提供した曲はどれも”テキトー”な感じだし、RAKIMの”R.A.K.I.M.”に至っては、やかましいだけのトラックがRAKIMのラップを台無しにしている。唯一、GANGSTARRの”BATTLE”だけが鑑賞に堪えうるが、それでも近々リリースされるというアルバムへの期待を煽るようなモノではない。

監督がカーティス・ハンソンという事で映画自体には期待しているが、サントラに限って言えば、EMINEMの3曲以外聴くべき曲が見当たらない。”LOSE YOUSELF”だけが救いかも。

オムニバス “A PIECE OF THE ACTION”

DJ FISHER主催の新レーベル、DAY BY DAYが送るコンピレーションが届いた。これといった共通項の無い参加アーティストがズラッと名を連ねている辺りに、一抹の不安を覚えるが…。

まず、タイトなドラムにサビの中近東風の女性ヴォーカルがドープなPARADIGMの”TERIBITHIA”で幕を開ける。思い入れの強い人も多いだろう、A TWICEのMIC EDUによる”BACKWARDS AND HALFWAY”は、スムースでジャジーなトラックが良い極上の逸品。続くJUGGA THE BULLYの”CORRUPT”は、パンチライン満載の、奇妙なドラム・プログラミングが面白い南部フレイヴァー。既に15枚近いアルバムを出しているMOKA ONLYの”WORTH THE WAIT”は、涼しげなトラックが夏仕様の心地よい一曲。フィラデルフィアのDEPT OF RECも”GONZOE OF STIMULATION”のドープなトラックでアピール、XTRACTS OF SLANGのレイドバックした”HOW DOES IT FEEL”、ファンキーなBUTTA BABIESの”TOE TO TOE”など、殆ど無名に近いアーティストながら、素晴らしい仕事を提供している。

とはいえ、アルバムのハイライトはやはり、BRAILLEとOHMEGAのグループ、RETURN TO SENDERによる美しい”BUTTERFLIES”と、お馴染みTHEM改めTHEMSELVESのやたらハッピーなトラックでDOSEがこの上なく伸び伸びしている”THEM’S MY PEOPLE”という事になるだろう。不気味なまでの明るさを持った、最高のパーティーチューン。

良い曲と駄目な曲が半々といった所。コンピとはいえ、あまりにまとまりが無い。同じ位の出来でも、もう少し統一感があれば、印象もだいぶ変わっていたと思うが。とはいえ、入門用には良いかと思うので、これらのアーティストを全く知らない人にこそ聞いて欲しい。大体知ってるという人は.. 金の使い道に困ってるなら。

オムニバス “ANTICON - GIGA SINGLES”

ANTICONの、レーベル・コンピ第2弾。

まず、ベスト・トラックはなんと言っても、SAGE FRANCISの”INHERITED SCARS”だ。DJ MAYONNAISEによるホーン・ループがドープなトラックもそうだが、やはり主役はSAGE。柔軟なデリヴァリーにエモーショナルなライム。とにかくドープで、この一曲のためだけにも、このアルバムを買う価値はある。次は、SOLE、DOSEにALIASというANTICONの顔が集った”WE AIN’T FESSIN”。彼ららしからぬ爽やか(!)なトラックで、特にDOSEがその歌うようなスタイルを最高の形で聴かせてくれる。DOSEの「ヒップホップ・ミュージックなんだぜ/痺れさせてくれよ」という一節に全てがある。THEM改めTHEMSELVESの、やたらとマッドな”MY WAY OUT OF A PAPER BAG”は、DOSEの独壇場だ。後半のエスニックな展開も含め、病んでいる。ALIASの”WATCHING WATER”も、タイトなドラム・ブレイクに美しいピアノがドープ。深すぎる。BUCK 65は”PEN THIEF”は、彼の水準レベルだが、SIXTOOの”GRIMEY INKS THE MOMENT”は、ドープ。ドラムが跳ねまくっている。

DOSEの変態的な要素だけを培養したようなスタイルのWHY?とPEDESTRIANによるOBJECT BEINGSの”ATTACK OF THE POST MODERN PAT BOONES!”は、とにかく人をナメたようなヴォーカル・スタイルがドープだ。WHY?のソロ”YOU’LL KNOW WHERE YOUR PLAIN IS…”もそうだが、最も好き嫌いが分かれるスタイルだろう。個人的には嫌いじゃないが、今後どれだけ幅を見せれるかが鍵だろう。SOLEの”SILENCE”、BUCK 65、SIXTOOに続きカナダからANTICONに加わったJOSH MARTINEZの”OUTLOOK”の2曲は”アルバム中の一曲”と言った感じで、しっくりこない。

前作と比べると、全体の質が落ちているのは否めない。特に、後半にかけてだいぶテンションが落ちてくる。いい曲も当然あるものの小粒な曲が大半を占め、それらがこのアルバムの印象を薄めてしまっている。まあ、ANTICONらしいといえばらしいが….よく分かりません。

オムニバス “ANTICON - HIPHOP MUSIC FOR THE ADVANCED LISTENER”

アメリカはとにかく広い。そんな分かりきった事を、このコンピレーションを聴いていて実感させられた。ヒップホップは好きだがどこにも居場所がない、そんな連中が集まって凄いコンピレーションを出した。ANTICONだ。

まず、ポッセカット。SLUG、SOLE、DOSE ONE、ALIASによるユニットDEEP PUDDLE DYNAMICSの”RAINMEN”は、シンプルなトラック上でのマイクリレーがドープ。RAKIMの一節を引用しながら登場するSLUGがやはり貫禄だ。そのSLUGのクルーRHYMESAYERSの若手EYEDEAが、正に地球上の物ではないイルなラインを聴かせる”SAVIOR?”、SHAPE SHIFTERSのCIRCUSが圧巻の”HOLY SHIT!”辺りがハイライト。

SEBUTONESとしても知られる、カナダのベテランBUCK 65とSIXTOOはそれぞれソロ曲を提供。2人ともマイクだけでなく、トラック面でも非凡なところを聴かせてくれる。ラッパーのDOSEとプロデューサーのJELによるユニットTHEMの”IT’S THEM”は、変則的なドラムの打ち込みと、それを至って自然に乗りこなすDOSEが凄まじい。駄目な人にはとことん駄目だろうが、一度ハマると病みつきに。ベストカットは、ALIASの”DIVINE DISAPPOINTMENT”だろう。神の視点からのライムと共に、ALIAS自身の手掛けるトラックもドープだ。ATMOSPHEREのSLUGといえば、その最大の魅力であるエモーショナルな語りを”NOTHING BUT SUNSHINE”でも堪能できる。両親の死についてのライム。SOLEの”MARTYR THEME SONG”は、彼の以前のグループLIVE POETSのDJ、MOODSWING9がドープなトラックを提供、SOLEも快調に飛ばしている。

ANTICONのサウンド面を担うDJ達によるインタールードもタイトで、スクラッチもいい味を出しているし(特別どうこういう程じゃないけど)、アルバムを一つにまとめるのに一役買っている。

とにかく、強烈なオリジナリティが全体に漂う、凄いコンピレーション。確かに癖が強い連中なので、拒否反応を示す人も多いかもしれないが、ヒップホップの本質を理解している人なら、虜になるだろう。彼らはただ”自分に正直”なだけだ。ヒップホップってそういうものでしょ?

オムニバス “ANTICON - WE AIN’T FESSIN’ (DOUBLE QUOTES)”

前から噂になっていたTORTOISEのJOHN HERNDONとのコラボレーション曲が、シングルとしてリリースされた。DOSE自身ファンだというこうしたポスト・ロック勢との共作は、今後の彼らの行方を占う上でも重要な位置を占めるモノとなってゆくだろう。まあ、そんな邪知をあざ笑うかのように、彼らは至って自然体だが。

まずは、そのTORTOISEのJOHN HERNDONのプロデュースによる”MORE FROM JUNE”が凄まじい事になっている。DPDの面々のパフォーマンスも相変わらずタイトだが、この曲の主役はJOHN HERNDONによるプロダクションだろう。特に、SLUGに続いて登場するEYEDEAのパートにおけるドラム・プログラミングは、言葉を失う程。 2曲目の”WE AIN’T FESSIN’ (DOUBLE QUOTES)”は、正にANTICONオールスターズ大集合といった趣。JEL、MAYO、ALIAS、ODD NOSDAMによる次々にスイッチしてゆくトラック上で、SOLE、DOSE、ALIAS、WHY?、PASSAGE、PEDESTRIANのマイクリレーが展開する。これこそANTICONといった曲で、真骨頂だ。個人的には、中盤の最高にドープな女性ヴォーカル・サンプル登場以降がハイライト。WHY?とDOSEの変態コンビがここでも際立っている。ラストの”PITY PARTY PEOPLE”は、とにかく明るく爽やかなパーティーチューン。SOLE、DOSE、ALIAS、PASSAGEによるマイクリレーだが、こうしたメロディアスなトラックでは、最早DOSEの独壇場だ。

3曲を聴き終って感じたのは、単体でのアルバムも良いが、やはり彼らが一堂に会した際のエナジーは驚異的だ、という事。何とも言えぬマジックが働いている。これまでのようなコンピ形態ではなく、全員が絡み合うオールスター・アルバムを聴いてみたい、と思っているのは俺だけではないはずだ。ここに収められた3曲には、これまでの集大成的な側面もあるが、確実に進歩した姿も垣間見れる訳で、その思いはなおさらだ。アルバム、アルバム!

オムニバス “B SIDE VOL 1: BLATANT BATTLE RAPS”

オハイオを代表するクルー、WEIGHTLESS。既にILLOGICと、トラックを一手に引き受けるMC兼プロデューサー、BLUEPRINT率いるGREENHOUSE EFFECTによる2枚のアルバムをリリース済みだが、これは、そんな彼らによるコンピレーション。

このアルバムで一番耳を引くのは、やはりBLUEPRINTのプロダクションだ。ソウルフルで美しいサウンドが基本だが、一種独特の泥臭さがある。幻想的な打楽器が心地よい”THE INNER SQUAD SCRIMMAGE”、シンプルなループが、曲の最後に来て美しい展開を見せる”TOUGH GUY TALK”、ILLOGICがかつて所属していたというクルー、3RD EYEを辛辣にディスした”THE 3RD DEGREE”は、ピアノ・ループにラウドなドラムが面白い。”GOT SOUL”は、レイドバックしたジャジーなギターが気持ちいいが、シークレット・トラック扱いの、曲名が全てを物語る”SUNRISE”がベスト・トラックだろう。太陽が昇ってくる感じのギター・ループがあまりにドープで、思わず目を細めて遠くを見つめてしまう感じだ。それに比べて、”YAKETY SMAKETY”や、”PANDORA’S BOX”はだいぶ弱い。外部からは、唯一ATOMS FAMLYが参加。CRYPTIC ONEの手掛ける、終末的なストリングスがドープな”PEN RELAYS”は、7分という長さを感じさせない、タイトなマイク・リレー。GREENHOUSE EFFECTにILLOGICとPLEAD THE 5THを加えたユニット、ISKABIBBLESとATOMS FAMによるラジオでのフリースタイルも同様だ。

リリック的にはアルバムの副題どうり、バトルライム中心。スクリブル・ジャムなどでお馴染みBLUEPRINTは勿論、ILLOGICをはじめ皆タイトなパンチラインをキックしている。

彼らのこれまでの作品と比較すると、少々質は落ちるがそれでも、粒揃いの曲が揃ったタイトなコンピレーション。幾つかのドープな曲に、幾つかのそうでもない曲。そういう事。

オムニバス “BENEATH THE SURFACE”

L.A.シーンの中心とも言える、伝説のGOODLIFE CAFEだが、外部の人間にはナカナカその全貌が伝わってこないのも事実。このアルバムからは、そんなシーンの片鱗が聴いて取れる。西海岸の実力派が一堂の会した、正にショウケースとも言える作品だが、主役は全曲を手掛けるプロデューサーO.D.だ。トラック・メイカーとプロデューサーがイコールで語られる事の多い昨今だが、このアルバムでO.D.は本来の意味でプロデューサーと言える仕事を見事にこなしている。

O.D.のビートの特徴は、極めて視覚的な所だ。まず、タイトル曲”BENEATH THE SURFACE”。SURPER NATURALを始めとする強者集団のALIEN NATIONだが、今回は、PHOENIX ORIONとORION SOUTHの2人が参加。とにかく、アメリカの果てしない大地を思わせるトラックが素晴らしく、こんな曲で幕を開けるアルバムなのだから悪い筈が無い、と確信させられる最高のイントロダクションだ。大御所FREESTYLE FELLOWSHIPからはACEYALONEとSELF JUPITER。”WHEN THE SUN TOOK A DAY OFF AND THE MOON STOOD STILL”は、ソウルフルなトラックに載せた寓話。頭とケツを締めくくるSELF JUPITERの凄まじいフロウを堪能して欲しい。とはいえ、心地よいギター・ループに歌うようなサビがドープな、全員が最高のパフォーマンスを聴かせてくれるコンシャスなポッセカット”WHO’S KEEPING TIME?”が前半のハイライト。こういったスケールの大きいトピックを地に足のついた形で聴かせられる所が、彼らの強みだろう。SHAPE SHIFTERSを代表するCIRCUSがフリーキーなフロウを披露する、ハードな”NIGHT AND DAY”、AFTERLIFEのELLAY KHULEの、声を裏返らせながらのマシンガン・フロウに圧倒される”SUNNY SIDE UP”も素晴らしいの一言。落ち着いたDK TOONとのコントラストも良い感じ。

今は亡き相棒YUSEFとのデュオ、THE NONCEで西海岸に新たな息吹を吹き込んだSACHが所属するGLOBAL PHLOWTATIONSから、ADLIB、OKITO、ZAGU BROWNが”SUBTERRANEAN SERVICE”でマイクを握る。うねるベースに最高のドラムが絡むハード・トラック。そのSACHがOKITOに変わり参加した”TO THE TURN OF THE EARTH”は、一転して明るい趣。女性ヴォーカルが良い。貫禄のフロウを聴かせるP.E.A.C.E.のソロは、爽やかな”YOU ARE IN MY CLUTCHES”。ラストの展開が最高にドープ、KUTMASTA KURTがターンテーブルを。

レイドバックしまくった”LINE POSTING IN ‘PEDRO”、やたら遅いトラックでのオールスター・マイクリレー”FARMERS MARKET OF THE BEAST”も面白く、DARKLEAFのH.I.M.N.Lによる最高に心地良いポエトリーリーディング”FOR HER SOULY, SLOWLY, SOLELY”、美しすぎる”(IN)SENSE”等、アルバム中で良いアクセントになっている。

とにかく駄曲は一切ナシ、細部まで完璧な真のクラシック。それぞれの曲の完成度が高いのは勿論、PROJECT BLOWED、AFTERLIFE、SHAPE SHIFTERS、WEST COAST WORKFORCE、ALIEN NATION等、西海岸のヒップホップを代表する多彩な面子をこれだけ集めながら散漫な印象は全く無い。O.D.の、MCの特性を完全に理解したプロデュース手腕が冴えまくっている。ウェスト・コーストのナンバーワン・プロデューサーは、このO.D.だ。断言できる。自信を持って、全てのリスナーにお勧めしたい一枚だ。

オムニバス “COAST II COAST”

ニューヨークのOZONEが送るオールラウンド・コンピレイション。アメリカ・カナダの実力派が集まっている。

ニューヨークの地下では既に名の知れた強者集団ATOMS FAMILYから、CO FLOWのEL Pの全面バックアップを得たVAST AIRとVORDULのデュオ、CANNIBAL OXは”IRON GALAXY”を提供。スペイシーなEL Pのビート(ドープ!)に、特徴的な声のVASTと凄みのあるフロウのVORDUL。同じくCO FLOW周辺からは、ボストンのMR LIFによる”BECAUSE THEY MADE IT THAT WAY”。盟友AKROBATIKの淡々としたピアノループ上で、ヒップホップの歴史、在るべき姿を知的にキック、燻し銀だ。ニュージャージーのPAUL BARMANは、PRINCE PAULのDELA SOUL時代を思い起こさせる陽気なトラックが良い”SENIORITIS”を。ウィスコンシンのブラス・バンド、YOUNGBLOOD BRASS BANDからは当代一のコンシャス・ラッパーTALIB KWELIを迎えた”STAY UP”。

続くCRYIN FREEMENは、プロダクションを手掛けるMOLEMENのDJ MASSACREと共にシカゴから。悲しげなストリングスに、ハイハットの無いドラムがタイトな”VERBAL REFLECTION”は、渋いデリヴァリーで知的な比喩表現を駆使。ドープだ。

ベスト・トラックは、中西部では絶大な人気を誇るミネアポリスのSLUGと、RUBBEROOMのアルバムでの革命的なサウンドが衝撃的だったシカゴのプロデューサー・チームTHE OPUSによる夢のコラボレーションが実現した”THE OCEAN”。SLUGの味のあるエモーショナルな語り口を、最大限に演出するTHE OPUSの深みのあるトラック。潮の音も効果的。

グッと下に降りて、アトランタからはMASS INFLUENCEによるダンサブルな”ALL OUT”。今回、唯一西海岸はロスから参加したTHE SOLUTIONの”X-5″は、メンバーのAJによるソロ・トラック。現在はカリフォルニア在住のDOSEとJELによるユニットTHEMだが、元々はDOSEはシンシナティ、JELはシカゴ出身。ANTICONの発足に伴ってカリへと移住したらしい。この”MYWAYOUTOFAPAPERBAG”は、2人の才能がガッチリ一つになった変態的な一品。最後は、カナダはモントリオールからOBSCURE DISORDER。ニューヨークのギャングスタNON PHIXONとの共演作”2004″。DAVE ONEのシンプルなトラックでのマイクリレー。そのDAVE ONEの弟、A-TRAKによる小品”Bonus Treats”の驚異的なスクラッチで、コンピは幕を閉じる。

各地から集められたアーティストによるコンピレーションという性格上、仕方ないのかも知れないが、アルバムとしてまとまりに欠ける印象は否めない。しかしながら、各アーティストがそれぞれドープな曲を持ち寄った点、SLUGとTHE OPUSの”THE OCEAN”のようなボーナス的コラボレイションが聴ける点など、コンピ特有の魅力に溢れている。

オムニバス “CONSTANT ELEVATION”

FATBOY SLIMやBASEMENT JAX、THE CHEMICAL BROTHERSなどのアルバムをリリースしているレーベルASTRALWERKSから、ヒップホップ・リスナーにも馴染みの深い面子が揃ったコンピレーションが届いた。

相変わらずのオリジナルEL-Pファンクを披露する”DAY AFTER THE DAY AFTER”を皮切りに、RECLOOSEによる真性オールドスクール・エレクトロ”CHIQWANGA”、BREAKESTRAのフロントマンTHIS KID NAMED MILESがここでもピュアなファンクでダンス・フロアを揺らす”SLIGHT AMNESIA”、メジャー移籍アルバム”BLAZING ARROW”での多くの要素を一つにまとめ上げた素晴らしいプロデュース手腕も記憶に新しいBLACKALICIOUSのCHIEF XCELが、久しぶりに泥臭いドラムを聴かせる”MULTITUDE”など、聴き所は多いが、どれも”この一曲”ではない。O.D.ことOMIDの手掛ける3曲はどれも平均的な出来だし、ANTI-POPの”CRAB LICE”などは収録された事が奇跡のよう。

このコンピレーションの意義は、究極のヒップホップ・クラシック”THE LESSONS”で知られる真の伝説STEINSKIが復活した”VOX APOSTOLICA”に集約されるように思う。ASTRALWERKSのようなレーベルのコンピに彼の新曲が収録される事で、THE CHEMICAL BROTHERSを始めとする、所謂ブレイクビーツ・アーティスト達のスタイルの源がどこにあるのかが明確にされているわけだ。そんな能書きは抜きにしても、”VOX APOSTOLICA”には今と昔の全てが詰まっている。時代が彼に追いついた。

全体的に粒揃いだが、どうせなら全曲インストにしたほうが良かったように感じる。STEINSKIの新曲は必聴だが、若干の消化不良感が残るのも事実だ。

オムニバス “DEF JUX PRESENTS…”

全く新しいサウンドとライム・スタイルで、90年代後半のヒップホップ・シーンに計り知れない影響を与えたCOMANY FLOWの解散は、多くのファンに大きな衝撃とシーンの行く末に対する不安をもたらした。結果的に、このEPに収録された3曲が最後の作品となったが、彼らの勢いは衰えるどころか増すばかりだ。

まずはCOMPANY FLOWだが、冒頭の”DPA”が最高だ。仰々しい始まりからノイジーでラフなファースト・ヴァース、深いループ、渦を巻くハイハット。EL Pのラピッド・フロウも絶好調。MR LENのスクラッチも良い。因みに、”DPA”とは”DRUM PATTERN AWARENESS”の事。”SIMMIAN D”には、NON PHIXIONのフロントMC、ILL BILLが加わり、タフでファンキーなビート上での掛け合いが素晴らしい。「マイクロソフトがなかったら/カマ野郎達にファンはいないぜ」。BIZの定番声ネタは、そのままファンキーだ。ラスト”SIMPLE”は、新世紀に向けての声明だ。クラシック・ロック調のリフに重たいベースライン。

ATOMS FAMILYのVASTとVORDULによるデュオ、CANNIBAL OXのDEF JUX第一弾”IRON GALAXY”は、クラシック以外の何物でもない。EL Pの新型ビートも素晴らしすぎるが、VASTとVORDULの2人もドープ過ぎるリリシスト振りを遺憾なく発揮している。”STRAIGHT OFF THE D.I.C.”は、よりスペイシーに。COMPANY FLOWとの決定的な違いも興味深い。

MHZのDJ、RJD2によるインスト・トラック”SILVER FOX”は、良い意味で誤算だった。ベルの音色、ソウルフルな声ネタ、挿入されるアジア的なサンプル、イレギュラーなドラム・パターン。DEF JUXといえばEL Pのビート、と思っていた向きには、RJD2の存在が嬉しい驚きをもって迎えられるだろう。MUSHからのリリース”FLOAT”で一躍新たなアンダーグラウンド・ヒーローとなったAESOP ROCKのDEF JUX第一弾”KILL EM ALL”は、軽い肩慣らしといった感じ。セルフ・プロデュースのベース中心のトラックは少し地味だが、粘っこいフロウに優れたリリックで飽きさせない。「奴隷はクソ野郎のために働き、クソ野朗は王のために働き/王は商売女、コカインのために働く….」

ドープ・トラック + ドープ・ライム = ヒップホップ・クラシック。公式はいたってシンプルだ。彼らは、ニューヨーク・シーンの最先端、つまり世界の最先端。COMPANY FLOWの最後の音源となった事は悲しいが、このEPを聴く限り余計な心配は無用だ。彼らは進化し続ける。だからヒップホップは面白い。

オムニバス “DEFINITIVE JUX PRESENTS II”

EL Pが興したレーベルDEF JUXの最初のコンピレーションが、COMPANY FLOW名義最後のリリースとなったのは皮肉だが、その後の彼らの快進撃は知っての通り。CANNIBAL OX”COLD VEIN”、AESOP ROCK”LABOR DAYS”という2枚のクラシック・アルバムを放った2001年は、彼らにとってもファンにとっても思い出深い年となった。レーベル名に絡んでDEF JAMと揉めた結果、正式名称をDEFINITIVE JUXに改めてのリリースとなった。

一曲目を飾るのは、WEATHERMENによる”SAME AS IT NEVER WAS”。EL P、MHZ、CANNIBAL OX、BREEZLY BREWIN、YAK BALLZ、MASAI BEY、CAGEらが所属するスーパーグループだが、ココではMASAI BEY、CAMU TAO、COPYWRITE、VAST、EL Pが参加。そのEL Pによる未来的宇宙ビート上でのマイクリレー、圧巻だ。最初のハイライトは、DEF JUXヴェテランMR LIFと、西海岸はLIVING LEGENDSからDEF JUXに参戦したMURSが、正に夢の共演を果たした”SNEAK PREVIEW”。EL Pの跳ねたビートも良いが、主役は断然MURSとMR LIF。甲乙付け難い最高のパフォーマンスで圧倒する。2番目のハイライトはMASAI BEYの”PAPER MACHE”。重たいフロウは、彼がBMS的な存在になっていくであろう事を予感させるし、EL Pのビートも病んでいる。最後のハイライトはやはり、御代EL Pの新曲”STEPFATHER FACTORY”だ。最早スポークン・ワードと言って良い抑えた語り口のSFライムが炸裂した新たな傑作だ。

その他にも、聴き所は満載だ。MHZのCAMU TAOの”HOLD THE FLOOR”は、奇妙なビートにCAMU独特のフリーキーなフロウが最高のドープ・チューン。MHZのCOPYWRITEをフィーチャーしたソロ名義シングル”JUNE”以来、成長著しいRJD2のインスト”I LIKE YOUR DEF JUX BABY TEE”は、最早珍しくも何ともなくなったインストゥルメンタル・ヒップホップに新たな魅力を加えている。SONIC SUMのフロント・マンROB SONICの自作自演曲”FU FOR FAILUR UGLY”もイルだし、”MIC MOLEST”でのATOMS FAMILYによるマイクリレーも凄まじい。甲高い声で病んだラインをキックするYAK BALLZの”FREAK SHOW”も、良い。MONDEEのタフなドラムも最高だ。

とはいえ、完璧ではない。セルフ・プロデュースのAESOP ROCK”DEAD PAN”は少し弱いし、MR LIFとOPIOの”FULCRUM”はドープだがココには場違いだ。EL PとVASTの”DR. HELL NO & THE PRAYING MANTIS”もビートが期待はずれに終わってしまっている。

とにかく、全く迷いが無い辺りが頼もしい。EL P以外にもRJD2やMONDEEなどの優れたトラックメイカーがいるし、AESOP ROCKにCAN OX、MHZ、MURS、MR LIFなど一流のMCも揃っている。このコンピレーションは、今年もDEF JUXの年になる事を高らかに宣言している。既にリリースされたAESOP ROCKの”DAYLIGHT EP”やこのコンピ第二弾を始め、MR LIFやMURS、EL P等のアルバムが控えている訳だから、暫くは彼らがシーンの中心となる事は明白だ。

オムニバス “EASTERN CONFERENCE ALL STARS III”

HIGH & MIGHTYのレーベルEASTERN CONFERENCEのコンピ第3弾。CAGEとCOPYWRITEのデビュー・アルバムが素晴らしい出来だった事もあって、勢い付いてます。

まずは、その勢いを象徴する強力な3曲を。TAME ONEの”TAME AS IT EVER WAS”は、かつての相棒EL DA SENSEIとは対照的に、ナスティなTAME ONEの魅力が堪能できる最高のバンギン・チューン。J-ZONE手掛ける激しいトラックもドープ!EASTERM CENFERENCEとDEF JUX周辺のラッパーが集結したスーパーグループ、WEATHERMENの”5 LEFT IN THE CLIP”は、正にポッセ・カットのお手本のような出来。ご無沙汰のJUGGAKNOTSからBREEZLY BREWINが最後に登場、貫禄のパンチラインでハイライトを演出。ラストは勿論、レーベルの看板CAGE。”BALLAD OF WORMS”は、CAGEらしい猟奇的ラブ・ストーリー。何も言う事はない。

RJD2とCOPYWRITEの”WON’T STOP”やJ-ZONEとRA THE RUGGED MANの”BRAWL”もドープだが、EASTERN CONFERENCEというレーベルの最大の弱点は、大黒柱のはずのHIGH & MIGHTYが精彩を欠いている事だ。このコンピレーションにおいても例外ではない。MR E-ONにはCAGEやTAME ONEほどのカリスマと実力はないし、他のアーティストには良いトラックを提供するMIGHTY MIも、自身のグループとなると今一つ元気がないような気がする。

そうは言っても、TAME ONEとWEATHERMENという2つの爆弾リリースを抱えている訳で、今年もレーベルは安泰だろう。個人的に、彼らのような徹底的に下世話で病的な連中は大好物。CAGEのDVDが今から楽しみだ。

オムニバス “EUPHONY”

ATOMS FAMでお馴染みのレーベル、CENTRIFURAL PHORCE RECORDINGSから、ATOMS FAMとその周辺のアーテストが集合したコンピレーション。

目玉はやはり、AESOP ROCKとCAN OXのVAST、WEE BEE FOOLISHのYESHUAによるコラボレイション、”SINISTER”だろう。CRYPTICのシンプルでダークなビート上でのマイク・リレー。だが個人的には、渋い声でドープなライムを吐くLODECKに注目したい。DESPOTとの”CYNICAL BASTARDS”(本作のベスト・トラック)、ソロ曲”STETHOSCOPE ALLEY”両方とも、トラックを含めこのアルバムのハイライトだ。このブルックリン在住のMC、LODECKの名は覚えておいた方がいい。ドープ!ATOMS FAMからは、ALASKAとWIND N BREEZEによるユニットHANGER 18の”PRISON”、CRYPTICのソロ”HALF LIFE”は自身が手掛けるトラック含め、一押しだ。そのCRYPTICは、ALASKAとのユニット、ITの”EFF THE HEARD 97″でも再登場、特筆する所はないが、タイトだ。

AESOP ROCKの”WATER”は、オペラのような女性ヴォーカル・ループに持っていかれる。AESOP ROCK程のMCにしか似合わないトラック。”COMA”のリミックスはイマイチかな。THE PRESENCEは、NASA(CAN OXのアルバムなどを手掛けたエンジニア)のドロドロのトラックがいい感じ。真っ暗な曲が続く中、BLUEPRINTのビートによる2曲、”WOKE UP THIS MORNING”と”TIME TO UNRAVEL”は二筋の光的な役割で、特に前者はBLUEPRINTが最高のピアノ・ループを聞かせてくれる。サビのホーンが何とも…。

個人的に、コンピレーションのの最大の魅力はボーナス的なコラボレーションと、新たな才能に出会えるところだと思っているのだが、このアルバムはその両方を満たしている。”SINISTER”とLODECK。それだけでも(勿論それだけじゃないんだけど)、”買い”の一枚だ。

オムニバス “FOOLBLOWN PRESENTS INSIDE OUT VOL. 1″

テキサスのオンラインショップ、FOOLBLOWN監修のコンピレーション。シーンを代表するアーティストから、どちらかと言うと無名に近いアーティストまで、地域を問わず参加している。

このコンピレーションのハイライトは、次の3曲。ATMOSPHEREの”THE ABUSING OF THE RIB”におけるANTのプロダクションは、素晴らしいの一言。メロディアスなピアノ・ループが、SLUGの美しいストーリー・テリングを際立たせていて、正にクラシックだ。続く”THE TUGBOAT COMPLEX”は、AESOP ROCKによるクラシック。”ハンマーがあったら、竹馬の上に街を造る/そうすれば、神のワインがグラスからこぼれても俺の足は濡れないだろ”、AESOPのリリックは驚異的だ。シンシナティを代表するリリシストILLOGICは、”VERBAGE”で最高のプロダクションを得た。幻想的なBLUEPRINTによるサウンドは、淀みまくったGREENTHINKの後だけあって、より美しく響く。ILLOGICの滑らかなデリヴァリーもソウルフル。

アルバムのオープニングを務めるGREENHOUSE EFFECTの”IN SYNC”は、悪くは無いがアヴェレージ。ATMOSPHEREと同じくミネソタのグループODDJOBSの”NORTH”は、CRESCENT MOONとADVIZERのスムースなデリヴァリーがジャジーなプロダクションと融合して、心地良い。SIXTOOは”TRAPDOOR”でいつもながらのダークな世界観を繰り広げていし、GREENTHINKの”I LOVE ART !”では、ODD NOSDAMがより狂ったプロダクションでDOSE以下お馴染みのメンツをサポート、リスナーを異次元へと誘ってくれる。VASTの”CHOLESTEROL”でのSHELSHOCKのプロダクションもなかなかだ。CVEの”CV VAULT”は一聴すると地味だが、じわじわと病み付きになる。凄まじいフロウ。

多くのタレントが参加したこのコンピレーション、曲の出来はピンきりといった感じだが、前述の3曲は聴き逃しは厳禁。それ以外も悪くないが、アルバム中の一曲的な出来が多く地味すぎるかな。

オムニバス “GOODNIGHT MUSICS PRESENTS”

GORDSKIとKUNGA 219によるTHE GOODSの3枚のアルバムとKUNGA 219のソロ・アルバムのリリースで着々と支持を広めつつあるGOODNIGHT MUSICS。初のレーベル・コンピ。

PEANUTS & CORNの中核をなすのがMCENROEだとすれば、GOODNIGHTにはGORDSKIがいる。彼のプロダクション・スキルは、THE GOODSの傑作アルバム3枚で証明済み。強烈な個性は持ち合わせていないが、確かなブレイク、質の高いループ選びなど、サンプリング・ミュージックの魅力をこれでもかと言うほどに堪能させてくれる。ダークでディープなモノからハッピーでファンキーなモノまで、作風の幅広さではMCENROEを凌いでいる。

THE GOODS”MEDIOCRE MAN”を除いて全て新曲だが、注目はやはりKUNGA 219とTACHICHIによるユニット、ROOSEVELT THARPAのお披露目となる”GLOBAL COMFORT”だろう。プロダクションにGORDSKI、MCは勿論KUNGA 219とTACHICHI、そして擦りにSKRATCH BASTIDという、最強の面子が揃っただけあって文句ナシにアルバムのベスト・カット。とにかくドープ!アルバムが楽しみな限り。

THE GOODSの新曲は、当然のようにどれも良い。GORDSKIによる荒々しいドラムの数々は、KUNGA 219のオーソドックスなライム・スタイルから違った表情を引き出す。”MONKEY SHUFFLE”が特に気に入った。

ニューカマーでは、シンガーKALEB SIMMONDSに注目したい。最近ではTACHICHI & MOVESのセカンドへの客演も印象的だったが、今回も”EVERYTHING’S LOVELY”や”SOOPERBOOZERS”で繊細なヴォーカルを聴かせてくれる。こういった存在はインデペンデント・シーンでは珍しいのではないだろうか。KUNGA 219との”SMOKE SIGNALS”では、トラック・メイキングでも達者な所を披露。もし今後GORDSKIのプロデュースでソロ・デビューするなら、かなり面白くなりそうだ。要注目。

最早、カナダ・インデペンデントで独走状態にあるPEANUTS & CORNに追い付けるのは、GOODNIGHT MUSICS位だろう。今後はROOSEVELT THARPAのアルバムを皮切りに、THE GOODSの4枚目、KUNGA 219のセカンド・ソロ、TACHICHIのソロ、GORDSKIのソロが控えている。待ちきれない。

オムニバス “LOW PRESSURE THE COMPILATION”

カナダの奇才DJ MOVESが主催するレーベル、LOW PRESSUREによるお披露目コンピレイション。一曲除いくトラックをDJ MOVESが手掛けているので、彼のリーダーアルバムと言ってもいいかもしれない。これまでにも、数々のアルバムでドープなビートを提供してきた彼。このアルバムには、そういったお馴染みの面子が参加している。

やはり、すでにMOVESとのコンビでアルバムをリリースしている、GOVERNOR BOLTS、TACHICHI、BIRDAPRESによる楽曲は、流石に相性はバッチリ。GOVERNOR BOLTSはというと、女ネタ”WEDNESDAY”も良いが、老人ホームに忍び込む変態男の話”NURSING HOME”が最高だ。病んでいる。TACHICHIの”ALL HANDS ON DECK”は、トラックのキャッチーさも手伝って、癖のある彼のデリヴァリーをよりとっつき易くしている。BIRDAPRESの”IN MY LIFE”は彼の自伝的な物語で、ジャジーなトラックが心地良い。

JOSH MARTINEZとの相性も、当然良い。特に、ウェスト・コーストの変人AWOL ONEと組んだ”WOMEN LOVING WOMEN”がドープだ。共に歌うようなフロウを持つJOSHとAWOL ONEは、この曲でも最高にソウルフル。G.B.やJ.M.がメンバーの覆面ユニット、5 HEADED RETARDの”CRAP RAP”は、トラックはイマイチだが、何と言ってもライムが正に笑撃的だ。何とタイトル通り、ウンコについて延々とラップする….くだらねー!ヴァンクーバーのINK OPERATEDの”METAPHOR SHADOW”は、唯一KABOOMがトラックを手掛けた佳曲。のどかなトラックに集団ラップ。ドープだ。インタールードとして収められたインスト曲は、あまり好きではなかった。

結論。DJ MOVESのトラックに関しては、これまでの彼の作品に比べて、若干の失望感は否めない。とはいえ、多様なMC陣の充実したパフォーマンスのお陰で、飽きさせない作りにはなっている。カナダ・シーンのショウケースとしての役割は充分果たしているので、良しとしようか。

オムニバス “PEANUTS & CORN - FACTORY SECOND”

質の高い作品を順調にリリースする事で、カナダ・シーンの中枢を担うまでになった感のあるPEANUTS & CORN。ココに来てベストを….と思いきや、多くが新曲で占められたコンピレイションが届いた。そのコンスタントに作品をリリースする姿勢にまずはリスペクト。

このコンピでもほぼ全曲の製作を手掛けているMCENROEは、自身名義の2曲でマイクを握っている。アルバムのイントロダクションを務める”EARNING WARNING”も良いが、AESOP ROCKの”9-5 ANTHEM”と同様なテーマを扱った”GOOD CORPORATE CITIZEN”が歌詞の面でドープ。そのMCENROEと”ENERGY CRISIS”で共演しているJOSH MARTINEZは、ソロ”RAINY DAYS”で最高にソウルフルなパフォーマンスを聴かせてくれる。MCENROEも素晴らしいプロダクションでJOSHの新たな一面を引き出す事に成功していると思う。他にも、SPOOFの”ACCEPT OR SIN”での深みのあるプロダクションには唸らされるばかりだ。

レーベルを代表するお馴染みの面子の中では、PIP SKIDが頑張っている。”I CAN’T FRONT”では、ヒップホップ好きの白人としてカルチャーの一部に溶け込もうとする様をライム、プロダクションも最高だ。浮遊感漂う”GREEN THUMB”やYYとの “PEG LEG CITY”もドープで、頭一つ抜きん出ている。メロディアスなJOHN SMITHの”BATTLE CRY”やGRUF THE DRUIDのスポークンワード”BRINK OF CONTROL”も余裕で良い。YOUR BROTHER IN MY BACKPACKのYYとGUMSHOE STRUTも印象的。”COPSOUP”、”LEGOS”は勿論だが、GUMSHOE STRUTのソロ”SISTER TO A MOTHER”、どれもドープで、アルバムが待ち遠しい限り。

結果的にこのコンピレーションは、PEANUTS & CORNがカナダのみならず世界的に見ても、極めてポテンシャルの高いレーベルである事の証明となった。MCENROEのプロダクションは勿論、ラッパー陣も素晴らしい。彼らからは、これからも目の離せない。

オマケで付いている、PIP SKIDの”HYPOCHONDRIAC”のビデオも見逃せない。

オムニバス “PROJECT BLOWED”

L.A.シーン全体に、凄まじいまでの影響力を誇るPROJECT BLOWEDの面々。彼らがいなかったら、シーンそのものが今とは全く違った形になっていたと断言できるだろう。では彼らは、何故そこまでの存在になりえたのか?その答えがココにある。実際ドコまでがファミリーなのかは、自分自身はっきり知らないのだが、思いつく限り名を挙げてみると、ABSTRACT RUDE、MEDUSA、FATJACK、AWOL ONE、2MEX、ST. MARK、DJ D、BUSDRIVER、TREND、DJ SLIP、ACEYALONE、SELF JUPITER、PEACE、MAIKAH 9、CHILLIN VILLAIN EMPIRE、RIFLEMAN、NGA FISH、GANJA K、VIRTUE、MASSIVE、PHOENIX ORION、DK TOON辺りだろうか。取り敢えず、凄い面子だ。

オープニングのハイパーな”JURASSIK”から、アルバムのテンションは下がる事はない。アカペラながら抜群の存在感を残すC.V.E.の”WHAT A PITY”は、彼らのスキルを示すほんの一例に過ぎない。ジャジーな生演奏に合わせてスキャットを聴かせるFREESTYLE FELLOWSHIPの”HOT”でも4MCによる類稀なヴォーカル・パフォーマンスが聴けるし、C.V.E.にELLAY KHULEが加わった”NARCOLEPSY”でのマシンガン・フロウも凄まじい。DK TOONは、メロディアスなフロウの最高峰をスティービー・ワンダーのカバー”SOLO IS SO LOW”で披露している。TRAY LOCの所謂プレイヤーモノ”ONCE A FREAK”は、使い古されたネタに新たな一面を加える事に成功しているし、FIGURES OF SPEECHのプロ・ブラックな”DON’T GET IT TWISTED”もドープ。聴き所だらけのアルバムではあるが、ハイライトはやはり、ポッセカット”HEAVYWEIGHTS ROUND 2″だろう。次々と登場するスキルフルなMC達の、最高のパフォーマンス。野郎どもに交じって女性MCも頑張っているが、ラストの2人MIKAH 9とVOLUME 10のフロウが凄まじい。彼らのライヴパフォーマンスの凄まじさが伝わってくるクラシックだ。

最も登場回数の多いABSTRACT RUDEとACEYALONE。 ABSTRACT RUDEの”STRENGTH OF A.T.U.”は、時代の先を見越していたかの様なバウンス・チューン。ABSTRACT RUDE、ACEYALONE、RIDDLERの”I DON’T KNOW”にABSTRACT RUDE”YEAH MAN”、オールドスクールなファンク・トラック”TREBLE & BASS”、ACEYALONE”I THINK ?”と、どれも素晴らしいの一言だが、9分近い”MASKARAID PART 1 & 2″こそ、2人の真骨頂が聴けるマスターピース。

とにかく、濃厚なパフォーマンスの数々に圧倒されっぱなしだ。ひたすら押し捲る64分。10年程前からこれだけクリエイティヴィテ溢れる作品を残しているのだから、彼らがどれだけ後継者達に影響を与えたかは、想像に難くない。基本。

オムニバス “ROPELLADDER 12″

AESOP ROCKの”FLOAT”やBOOM BAP & DOSE ONEの”CIRCLE”など、個性的なアルバムを積極的にリリースする事で、今俄然注目が集まるMUSH。普通コンピレーションというのは、余程上手くやらないと一貫性に欠けたものになるか、似たような曲ばかりで多様性に欠けたものになるかのどちらかに傾きがちだ。が、流石はMUSHと言うべきか、この”ROPELLADDER 12″は、そういった失敗は犯していないばかりか、統一感を保ちつつも多様性に富んだコンピレーションとなった。

基本的に捨て曲はないのだが、最も魅力的だったのが、WHY?とODD NOSDAMによるユニット、REACHING QUIETの”113TH CLEAN”だ。幾つかのセクションに分けられたODD NOSDAMのトラックは、テレビや古い映画からのヴォーカル・サンプル、とにかく重たいドラム、おどろおどろしいストリングスなど、ただ素晴らしい。WHY?も、歌うような、というより完全に歌っている彼独特のスタイルを最高の形で聴かせてくれる。”RAIN DANCE”は、FAT JONの極めてジャジーなトラックが素晴らしく、雨音すらドープに響く逸品だ。ソウルフルなキーボード、美しいフルート。ラップには、自身のグループFIVE DEEZをフィーチャー。

DOSE ONEがいつも以上にフリーキーに迫る”INVENTOR CRY”も素晴らしい。幻想的なサウンドを手掛けるのは、クラシック・ディスコからジャズまでを基盤とするREVOLUTIONARY INKことROBERT CURCIO。SLUGがキャッチーなトラックで跳ねる”WANT”では、BOOM BOPがSLUGの違った魅力を引き出しているし、APANIの”THE SPIRIT WITHIN”は、ニューヨークのジャズ/ヒップホップ・イヴェントなどで回しているというNICKODEMUSが心地良いトラックを用意。”THE ACTIVE ELEMENTS”では、AESOP ROCKが相変わらずポエティック。

インスト曲では、LULU MUSHIによる”I DREAM”が気に入った。ハープの音色が文字通り夢見心地な逸品で、抑えたDJ SIGNIFYのスクラッチも効果的だ。DJ OSIRISの”LISTEN”は、とにかく怪しい世界が淡々と繰り広げられる。後半にかけて緊張感を増してゆく構成も見事。アルバムの最初と最後を請け負うJELのトラックも、でしゃばらずに役目を果たしている。素晴らしいドラム。

結果的に、非常に完成度の高いコンピレーションとなっている。欠点を抱える曲も勿論あるが、曲順も含めて全体の構成が素晴らしいのでそれ程気にならない。とにかく、独特の空気を持ったアルバムに仕上がった。ココまで一貫したアルバムをまとめたMUSHには感嘆する。取り敢えず耳を傾けて欲しい。

オムニバス “SCRIBBLE JAM 2005 U.S. TOUR + COMPILATION VOL. 3″

記念すべき第10回目を迎えたSCRIBBLE JAM初の全米ツアーの模様を収めたツアー・ドキュメンタリー。ツアーに同行したGLUE (ADEEM、DJ DQ)、BLUEPRINT、MR DIBBS、DJ RARE GROOVEのインタビュー、ライブのほか、各都市で行われたMCバトル予選の模様も収録。3作目となるSCRIBBLE JAMコンピレーションも同梱した豪華版。

30分程のツアー・ドキュメンタリー本編は、主にツアー先の映像やADEEM、BLUEPRINT、MR DIBBSのインタビューで構成されているが、それほど面白い物ではなかった。GLUEやBLUEPRINTのライブ映像が断片的にしか収録されていないのも不満。面白かったのは、アリゾナ州フェニックスでのMCバトルでの、白人のラッパーがネイティブ・アメリカンのラッパーに対して居留地ネタなど差別的な内容のライムで攻撃した事が発端で起きた乱闘騒ぎくらいかな。

特典映像は本編より長くて、1時間に渡ってMCバトル地区予選の模様が各都市ごとに収められている。正直、見る価値のないものも多く、何故こいつが決勝に?と思わせるMCも少なくないのだが、もの凄くレベルの高いバトルも幾つかある。中でも、ニューヨーク、ロス、サンフランシスコの3都市は流石にレベルが高く、見所満載。本編中でのインタビューでもADEEMが”気になったドープなMC”として名を挙げているIRON SOLOMON、NOCANDO、THE SAURUSの3人は特に要チェック。3人とも、発声、ブレス・コントロール、巧みなライム構成など、どこを取っても素晴らしいの一言だ。中でも、病んだユーモアとエナジー溢れるフロウがとにかくドープなIRON SOLOMONが一番のお気に入りだ。とはいえ、ハイライトは全てのMCが高いレベルを誇るロサンゼルスかな。優勝したNOCANDOは知的さが垣間見れるトップ・オブ・ザ・ヘッドが別格だが、レイドバックしたスタイルと流れるようなフロウがドープなTRIUME、異彩を放つSEEFORなど、ロスのシーンの充実振りには驚かされる。他にも、鋭い切り返しを聴かせるBO RATも以前のSCRIBBLE JAMの時より成長してるし、シカゴのはずなのに何故かニューヨークの予選に出ているPRESENCEもさすがベテラン、安定している。

さて、コンピ・アルバムの方には、馴染みの面子から新顔まで、幅広いアーティストの新曲を収録。一番気に入ったのは、北カリフォルニアのFRANCOによる”SHORT VOYAGE”だ。EQUALIBRUMによる映像を喚起させるトラックも素晴らしいし、バトルで既に有名なFRANCOも、レコーディング・アーティストとしても成功するであろう可能性を感じさせるパフォーマンスを聴かせてくれる。まるでロード・ムービーを見ているような佳曲だ。ミネアポリスのSENSE OF SOUNDも面白いし、MUSABやMAC LETHAL、GLUE、MAKERといったお馴染みの面子も質の高い楽曲を提供している。

本編であるはずのドキュメンタリー部分が最も退屈というのは皮肉だが、MCバトルやコンピ・アルバムは満足のいく出来で、そういった意味ではバランスが取れているかもしれない。DVD + CDという形態を取ったのも、それが分っていたからなのかも知れない。