今やカリズマティックな人気を誇るSLUGが、相棒ANTを引き連れて戻ってきた。もう、それだけで多くのヒップホップ・ジャンキー達はレコ屋に走るだろうから、正直言ってレビューなんて必要ないと思うが….。
で、そのSLUGだが、結論から言ってこちらの多大な期待を良い意味で裏切ってくれた。このアルバムでは、これまでにない多彩なフロウで、リリックに盛り込まれた様々な感情を表現。SLUGは、喜劇と悲劇を同じベクトルで語る事の出来る希有な才能を持ったMCである事を再認識させられる。元カノに宛てたお約束的な”FUCK YOU LUCY”では徹底的にエモーショナルに、お得意のユーモラスなストーリーモノ”HAIR”には、意外な結末を用意…これは聴いてのお楽しみ。アルバムも終わろうかという”ONE OF A KIND”と”BLAMEGAME”では、皮肉っぽいバトル・ライムで強気な所を見せる。
トラックに話を移すと、一言で言ってANTはANTだったが、今回は幾つか新境地を披露している。珍しくドラムが太いブルージーな”FUCK YOU LUCY”、十八番のシンプルなピアノループが光る”GODLOVESUGLY”、軽妙な”BREATHING”、レゲエ調の”BLAMEGAME”辺りは、なかなかドープ。だが、全体的にドラムはやはり薄いし、あちらこちらに導入された電子音は、明らかに浮いている。
実も蓋もないが、結局は”SLUGはマジでいいね!”という結論に落ち着いてしまう訳だ。このアルバムでSLUGは、当代随一のリリシストとしての評価を改めて確かなモノにするだろう。取り敢えず、駄目になった姿が想像できないという意味で、本当に貴重な存在だ。極上のエンターテイメント・アルバム。
ATMOSPHERE “LUCY FORD”
ANTICON等での数々の課外活動を経て、その才能に見合っただけの評価と人気を世界的に高めつつあるSLUG。未だに色褪せないクラシック”OVERCAST!”から、実に4年ぶりのアルバムである。オリジナル・メンバーだったSPAWNが抜け、SLUGの1MC体制では初のアルバムだ。彼の魅力であるそのエモーショナルな語り口は、一向に衰える気配は無い。活動量を考えると、正に驚異的。
冒頭の”BETWEEN THE LINE”から、SLUGの魅力が最大限に現れている。心地よいトラックに乗せ歌うようなデリヴァリーで、ストレスに満ちた日常を、3つの物語から浮かび上がらせる。「今日誰かを殺しちゃうかも….」サビが強烈だ。”LIKE TODAY”では、変化の少ない毎日を皮肉っぽく語り、”DON’T EVER FUCKING QUESTION THAT”は、別れた彼女へのラヴ・ソング。”WOMAN WITH THE TATTOOED HANDS”では、中年女性の手にある2つの刺青を、人間の善と悪の隠喩に使い、不思議な物語を聞かせてくれる。美しすぎるピアノ・ループも含め、アルバムのベスト・カット。
音について気になったのは、ANTは速い曲やハードな曲は得意でない、という事。彼の魅力はやはり、スムーズでメロウな曲でこそ発揮される。例えば、”BETWEEN THE LINE”、”DON’T EVER FUCKIN QUESTION THAT”、そして”THE WOMAN WITH THE TATTOOED HANDS”等は、彼の真骨頂だろう。やはりというか、JELが手掛けた曲が総じて高水準だ。僅か3曲ではあるが、車について歌ったダビーな”FREE OR DEAD”、ハードな”THEY’RE ALL GONNA LAUGH AT YOU”、随分謙虚な、ファンキーでレイド・バックした”LOST AND FOUND”、どの曲もSLUGの新たな魅力を引き出す事に成功している。夢の競演ともいえるのが、EL Pがビートに加えマイクでも参加した、シークレット・トラックの”HOME COMING”だ。2人がそれぞれ、ニューヨークとミネソタでの幼少期についてキック。徐々に盛り上がってくビートもドープだ。これこそ、正にボーナス・トラック。
求めるものが大き過ぎるのだろうか、素晴らしいアルバムであるにもかかわらず、若干の失望感があるのが正直な所。ホンの幾つかの駄曲が残念でならない。決してANTのトラックが嫌いな訳ではないのだが、JELとMOODSWING9の手掛けた曲がそれぞれこのアルバムの重要な位置を占めているところを見ると、この2人がもっとやっていれば…..等という邪念が頭をもたげてしまう。最後にはEL Pが控えてもいる事だし…..。
冒頭の”BETWEEN THE LINE”から、SLUGの魅力が最大限に現れている。心地よいトラックに乗せ歌うようなデリヴァリーで、ストレスに満ちた日常を、3つの物語から浮かび上がらせる。「今日誰かを殺しちゃうかも….」サビが強烈だ。”LIKE TODAY”では、変化の少ない毎日を皮肉っぽく語り、”DON’T EVER FUCKING QUESTION THAT”は、別れた彼女へのラヴ・ソング。”WOMAN WITH THE TATTOOED HANDS”では、中年女性の手にある2つの刺青を、人間の善と悪の隠喩に使い、不思議な物語を聞かせてくれる。美しすぎるピアノ・ループも含め、アルバムのベスト・カット。
音について気になったのは、ANTは速い曲やハードな曲は得意でない、という事。彼の魅力はやはり、スムーズでメロウな曲でこそ発揮される。例えば、”BETWEEN THE LINE”、”DON’T EVER FUCKIN QUESTION THAT”、そして”THE WOMAN WITH THE TATTOOED HANDS”等は、彼の真骨頂だろう。やはりというか、JELが手掛けた曲が総じて高水準だ。僅か3曲ではあるが、車について歌ったダビーな”FREE OR DEAD”、ハードな”THEY’RE ALL GONNA LAUGH AT YOU”、随分謙虚な、ファンキーでレイド・バックした”LOST AND FOUND”、どの曲もSLUGの新たな魅力を引き出す事に成功している。夢の競演ともいえるのが、EL Pがビートに加えマイクでも参加した、シークレット・トラックの”HOME COMING”だ。2人がそれぞれ、ニューヨークとミネソタでの幼少期についてキック。徐々に盛り上がってくビートもドープだ。これこそ、正にボーナス・トラック。
求めるものが大き過ぎるのだろうか、素晴らしいアルバムであるにもかかわらず、若干の失望感があるのが正直な所。ホンの幾つかの駄曲が残念でならない。決してANTのトラックが嫌いな訳ではないのだが、JELとMOODSWING9の手掛けた曲がそれぞれこのアルバムの重要な位置を占めているところを見ると、この2人がもっとやっていれば…..等という邪念が頭をもたげてしまう。最後にはEL Pが控えてもいる事だし…..。
ATMOSPHERE “SAD CLOWN BAD DUB 2″
このアルバムは、ツアー会場のみで売られたモノ。完全にSLUGとANTの2人のみで作られており、本当の意味で混じり気のないATMOSPHEREのアルバムと言えると思うが…とにかく、現在最高のMCの1人であるSLUGの作品が、一つでも多く聴けるのは嬉しい限りだ。
ファンキーだがどこか悲しげなギター・ループの”SAD CLOWN”は、ピエロの悲しい物語。SLUGは、自分をこのピエロに重ねているように聞こえるのだが….ドープ。元カノへの淡い思いを歌った”BODY PILLOW”、太陽が目に浮かぶほど爽やかな”THE PILL”、ブルージーな”FASHION MAGAZINE”は、ファッション雑誌に現実逃避する女の物語。夏っぽい”THE WIND”、「退屈したら宗教でも始めようかな」なんて言ってる”HUNGRY FUCK”、サビの女性ヴォーカル・サンプルがドープな”THE OCEAN”は、しかし、名コンピ”COAST 2 COAST”収録のTHE OPUSヴァージョンを聴いた後では、少々物足りないのが正直な所。女の事を歌った哀愁漂うライムはドープだが、OPUSヴァージョンの方がより深い世界観をライムに与えてると思う。
アップ・テンポな”WHEN IT BREAKS”は、オールドスクール風というより、ただ古臭いだけで、基本的にANTは、早いトラックは得意でないと思う。アルバム中好きでないのはこの曲だけだ。自己探求といった感じ(「今まで泣いてきた事を笑わずにいられない/自分自身を中から見つめてたら」)の”INSIDE OUTSIDE”、”THE RIVER”では、死んだ友人ブライアンについてシミジミとライム。ドープの一言。
全体的に、”OVERCAST!”と比べても遜色のない素晴らしい出来。ANTのトラックも、特筆すべき点は何もないがリリックの空気感にマッチしていて、問題は無い。それにしても、SLUGはホントにいいね!!
ファンキーだがどこか悲しげなギター・ループの”SAD CLOWN”は、ピエロの悲しい物語。SLUGは、自分をこのピエロに重ねているように聞こえるのだが….ドープ。元カノへの淡い思いを歌った”BODY PILLOW”、太陽が目に浮かぶほど爽やかな”THE PILL”、ブルージーな”FASHION MAGAZINE”は、ファッション雑誌に現実逃避する女の物語。夏っぽい”THE WIND”、「退屈したら宗教でも始めようかな」なんて言ってる”HUNGRY FUCK”、サビの女性ヴォーカル・サンプルがドープな”THE OCEAN”は、しかし、名コンピ”COAST 2 COAST”収録のTHE OPUSヴァージョンを聴いた後では、少々物足りないのが正直な所。女の事を歌った哀愁漂うライムはドープだが、OPUSヴァージョンの方がより深い世界観をライムに与えてると思う。
アップ・テンポな”WHEN IT BREAKS”は、オールドスクール風というより、ただ古臭いだけで、基本的にANTは、早いトラックは得意でないと思う。アルバム中好きでないのはこの曲だけだ。自己探求といった感じ(「今まで泣いてきた事を笑わずにいられない/自分自身を中から見つめてたら」)の”INSIDE OUTSIDE”、”THE RIVER”では、死んだ友人ブライアンについてシミジミとライム。ドープの一言。
全体的に、”OVERCAST!”と比べても遜色のない素晴らしい出来。ANTのトラックも、特筆すべき点は何もないがリリックの空気感にマッチしていて、問題は無い。それにしても、SLUGはホントにいいね!!
ATMOSPHERE “SAD CLOWN BAD DUB 3″
ライヴ会場限定シリーズ”SAD CLOWN BAD DUB”の最新作が届いた。今回は、ベスト盤とでも言うべきライヴ音源。ライヴに定評のある彼ら、このアルバムはその魅力の一部ではあるが、捕らえる事に成功している。バックを務めるのは勿論MR DIBBS…と言いたい所だが、ここではODDJOBS + TYPICAL CATSのライヴ盤でもバックを務めていたミネアポリスのバンド、THE HEIRUSPECSによる演奏がサイドMCなしのSLUGを支えている。因みに、録音は2001年12月26日、地元ミネアポリスにて。
デビュー・アルバム”OVERCAST!”と最新作”LUCY FORD”からは勿論、”SAD CLOWN 2″やカセット・アルバム”SEVEN”からの名曲もセレクトされていて、嬉しい限り。それぞれの曲について言及はしないが、ライヴの醍醐味という面でリスナーの欲求を満たしてくれるのは、大胆にアレンジされた”SCAPEGOAT”や、後半のノイジーなギターが良い”THE ABUSING OF THE RIB”辺りか。冒頭の”ASPIRING SOCIOPATH”ではニルヴァーナを歌ったりもしてるし、ラストの”SHRAPNEL”も素晴らしい。
録音状態も予想以上に良いし、選曲も文句なし。2ターンテーブル・ライヴによる素晴らしい構成こそ聴けないものの、たった一人で力強いパフォーマンスを聴かせるSLUGは、正にマスター・オブ・セレモニーの冠に相応しい。SLUG自身ライヴ・アルバムはあまり好きじゃないらしいが、一ファンとしては、彼らのような優れたパフォーマンスこそ、後世に残すべき物だと思うのだが。次回はビデオをお願いしたい。
デビュー・アルバム”OVERCAST!”と最新作”LUCY FORD”からは勿論、”SAD CLOWN 2″やカセット・アルバム”SEVEN”からの名曲もセレクトされていて、嬉しい限り。それぞれの曲について言及はしないが、ライヴの醍醐味という面でリスナーの欲求を満たしてくれるのは、大胆にアレンジされた”SCAPEGOAT”や、後半のノイジーなギターが良い”THE ABUSING OF THE RIB”辺りか。冒頭の”ASPIRING SOCIOPATH”ではニルヴァーナを歌ったりもしてるし、ラストの”SHRAPNEL”も素晴らしい。
録音状態も予想以上に良いし、選曲も文句なし。2ターンテーブル・ライヴによる素晴らしい構成こそ聴けないものの、たった一人で力強いパフォーマンスを聴かせるSLUGは、正にマスター・オブ・セレモニーの冠に相応しい。SLUG自身ライヴ・アルバムはあまり好きじゃないらしいが、一ファンとしては、彼らのような優れたパフォーマンスこそ、後世に残すべき物だと思うのだが。次回はビデオをお願いしたい。
ATMOSPHERE “YOU CAN’T IMAGINE HOW MUCH FUN WE’RE HAVING”
前作”SEVEN’S TRAVELS”が、EPITAPHの流通のお陰か、売れに売れたATMOSPHEREの5作目。
ATMOSPHEREのレビューではいつもSLUGの素晴らしさを強調してきたように思うが、今回はANTの素晴らしい仕事振りに触れないわけにはいかないだろう。これまでは、あくまでSLUGのラップに”マッチする”トラックを提供してきたANTだが、今回は文句なく最高のトラックを提供してくれている。”WATCH OUT”や”BAM”、”THAT NIGHT”のように、ドラムで引っ張るタイプの楽曲に顕著なドラムの充実度、”SAY HEY THERE”や”GET FLY”で聴けるエモーショナルなアレンジなど、間違いなくANTの現時点でのベスト・ワークが詰まっている。文句なし。
SLUGの方はというと、”SAY HEY THERE”や”ANGELFACE”といったプレイボーイと駄目男が混在する恋愛悲喜劇を筆頭に、相変わらず安定したカッコ良さ。ATMOSPHEREのショウを見に行った帰りにレイプされ殺された16歳の少女の事を歌った”THAT NIGHT”は、緊張感のあるサンプルとハードなドラム、感情を抑えたSLUGのラップが三位一体となって、アルバムにダークでシリアスな要素を持ち込んでいる。
ベスト・トラックは、ANTのトラックも感動的な”LITTLE MAN”だろう。手紙形式のこの曲でSLUGは、息子、父親、そして自分自身に真摯な言葉を投げかける。ファースト・ヴァースでは「お前がママをずっとハッピーでいられるようにするのを見てきた/パパはお前からその秘訣を教わったよ/本当は、パパがお前に教えてやらなきゃいけないのにな」と、ツアーで家を離れる事の多い自分を恥じつつ息子ジェイコブに無償の愛情を示し、セカンド・ヴァースでは「自分の運命が怖いんだ、親父みたいにはなりたくない/女は絶対殴らないし、コカインもやらない/その点だけはアンタには感謝してるよ」と、父親に対する愛憎入り混じる感情を吐露。自らに宛てたサード・ヴァースでは、人生と音楽に疲れた自分に向って「”ありがとう”と言いたいトコだけど、”頑張れよ”とだけ言っておくよ」と希望を残す形で締めている。ドープ!
ここにきてやっとANTとSLUGの比重が均等になってきたと感じさせる、充実した出来だ。これといったキラー・チューンがないのがマイナスと言えばマイナスだが、アルバム全体の完成度で言えば1、2を争う出来と言っても過言ではない。余裕を感じさせる傑作だ。
ATMOSPHEREのレビューではいつもSLUGの素晴らしさを強調してきたように思うが、今回はANTの素晴らしい仕事振りに触れないわけにはいかないだろう。これまでは、あくまでSLUGのラップに”マッチする”トラックを提供してきたANTだが、今回は文句なく最高のトラックを提供してくれている。”WATCH OUT”や”BAM”、”THAT NIGHT”のように、ドラムで引っ張るタイプの楽曲に顕著なドラムの充実度、”SAY HEY THERE”や”GET FLY”で聴けるエモーショナルなアレンジなど、間違いなくANTの現時点でのベスト・ワークが詰まっている。文句なし。
SLUGの方はというと、”SAY HEY THERE”や”ANGELFACE”といったプレイボーイと駄目男が混在する恋愛悲喜劇を筆頭に、相変わらず安定したカッコ良さ。ATMOSPHEREのショウを見に行った帰りにレイプされ殺された16歳の少女の事を歌った”THAT NIGHT”は、緊張感のあるサンプルとハードなドラム、感情を抑えたSLUGのラップが三位一体となって、アルバムにダークでシリアスな要素を持ち込んでいる。
ベスト・トラックは、ANTのトラックも感動的な”LITTLE MAN”だろう。手紙形式のこの曲でSLUGは、息子、父親、そして自分自身に真摯な言葉を投げかける。ファースト・ヴァースでは「お前がママをずっとハッピーでいられるようにするのを見てきた/パパはお前からその秘訣を教わったよ/本当は、パパがお前に教えてやらなきゃいけないのにな」と、ツアーで家を離れる事の多い自分を恥じつつ息子ジェイコブに無償の愛情を示し、セカンド・ヴァースでは「自分の運命が怖いんだ、親父みたいにはなりたくない/女は絶対殴らないし、コカインもやらない/その点だけはアンタには感謝してるよ」と、父親に対する愛憎入り混じる感情を吐露。自らに宛てたサード・ヴァースでは、人生と音楽に疲れた自分に向って「”ありがとう”と言いたいトコだけど、”頑張れよ”とだけ言っておくよ」と希望を残す形で締めている。ドープ!
ここにきてやっとANTとSLUGの比重が均等になってきたと感じさせる、充実した出来だ。これといったキラー・チューンがないのがマイナスと言えばマイナスだが、アルバム全体の完成度で言えば1、2を争う出来と言っても過言ではない。余裕を感じさせる傑作だ。
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