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3 MELANCHOLY GYPSYS “GYPSY’S LUCK”

MURS、ELIGH、SCARUB。古くはLOG CABINのメンバーとして、現在はL.A.最強のクルーLIVING LEGENDSのメンバーとして、クラシックを生み出し続ける3人のMCによるグループが3 MG’Sだ。

セルアウト・ラッパーについてのありきたりな内容を、新たな視点でフレッシュに聴かせる”DISAPPOINTMENTS”が一発目。腹に響くキック、浮遊する上ネタが3人のライムを支える。やはり、この3人の相性は完璧だ。ストリングスが哀愁を誘うトラックが良い”ABSTRAKTIONS UV REALITY”がベスト。神についての考えを述べるSCARUBのヴァースが個人的には好みかな。女の体と心についてライムした”HOPELESS ROMANTIC”のイレギュラーなリズムも面白いし、ゴシップや噂についての”YOUR BUSINESS”のトラックもドープだ。エスニックな”MASS MEDIA”では、タイトルの通り現代のメディア問題に言及。ラストの”ROUND THE CAMPFIRE”だけ何故か音質が悪いが、それが良い方向に作用していて、他の曲にはないロウネスに満ちている。3人のラップにも、フリースタイルっぽいラフな魅力がある。

同じテーマを扱っても、3人が全く違ったアプローチを聴かせる。才能溢れるLIVING LEGENDSクルーの中でも、特に光っている3人。ELIGHによるプロダクションが少し弱いのが勿体無いが、3人がライムすればそんなマイナス点などは気にならない。LEGENDS以前から繋がりを持つ彼ら、そこには特別な何かがある。彼らのベスト・ワークではないが、お勧めだ。

ELIGH “A STORY OF 2 WORLDS”

ELIGHのこのアルバムは、前作よりもサウンドクオリティが格段に良くなった。勿論、プロダクションはELIGHが中心。ELUSIVEやGROUCH、BIZZAROのトラックも良いアクセントだ。

アルバム1発目は、幻想的なトラックにコンシャス・ライムの”HESITATION”。ELIGH以外の何物でもない。女との偶然の出会いの物語”COINCIDENCE”は、シンプルなベースラインに、BICASSOの何とも言えないスクラッチが色を添えていて、ドープ。SCARUBとの”8TRED”は、ピアノのメロディがポエティックな2人のライムと最高にマッチしている。コンビネーションも抜群だ。映画的なイントロに続いて登場するメロウなループが心地良い”LUST”は、ELUSIVEのプロデュース。”PLANTLIFE”では、BIZARROがプロダクションと共にマイクでも参戦。

”INTERLUDE”を挟んでの”1998″は、次世代へのポジティヴなメッセージ。シンプルなトラックもドープだ。都会生活を描いた”METRO CAMOUFLAGE”に続く”7 YEARS”にはMURSが加わり、運命の出会いに満ちた学生生活について回想してみせる。自らを磨けと促す”HEAD CHECK”では、自分の失敗も真摯に告白。宇宙的なポエティック・ライム”QUANTUM THOUGHT”は、ラフなドラムにスペイシーなループが良い。”FISHERMAN’S LOT”は、味わい深いギターループが何ともドープ。フックも最高だ。トラック同様にライムも味わい深い。ベスト・トラックの称号は、この曲に。

前作ほどではないが、押並べて高水準。殆どを自身が手掛けたシンプルなトラックに、独特のデリヴァリー。ファン必携のアルバムである。勿論、ファンでない人にもお勧めだ。

ELIGH “AS THEY PASS”

ウェスト・コースト代表LIVING LEGENDSクルー。多くの多作なアーティストを配する彼らだが、初期の作品には、今の彼らに無い生々しさがアチコチに刻まれている。この、ELIGHのデビュー・アルバムも、そんな一枚。96年のカセット・アルバムにボーナストラックが追加され、嬉しい再発だ。

友人のMC達へのシャウト”BERINTRO”で幕を開けるアルバムは、フレッシュなビートとライムが詰まっている。詩的なリリックもそうだが、詰めたフロウと渋い声は、クルー随一の二枚目度を誇っている。”IN A QUIET MANNOR”での「イルマティック、違う/シネマティック、正にそう」という一節が、ELIGHのスタイルを象徴している。それぞれの曲が彼の生活の反映である訳で、”EVERYDAY”などはその最たる例。各々が文字通り時についてライムするポッセ・カット”TIME IS THE ESSENCE”、YUKI HARAなる人物が、おそらく日本人女性MCでは最高レベルのスキルを聴かせる”IT WAS A MISSION”、女ネタ”THE DRAGON”もドープ。個人的には、ドラムがよりマッシヴなオリジナルが好みかな。

ほぼ全曲を手掛けているELIGHのプロダクション・スキルも相当なモノ。全体的に、荒々しいドラムに幻想的なループの組み合わせだが、どれも独特の雰囲気を作り出していて素晴らしい。”EVERYDAY”や”IT WAS A MISSION”、”TECHNOLOGY”辺りが個人的には特に気に入った。GROUCH手掛ける”MOVING 99″と、ループが幻想的なELUSIVEによる”IN A QUIET MANNOR”も最高にドープだ。

サウンド・クオリティに顕著だが、とにかくロウな魅力に満ちたアルバムだ。最高のビートに最高のラップ。ヒップホップ・ファンとして、これ以上何を望む?

ELIGH “GANDALF’S BEAT MACHINE”

MCとしてだけで無く、ビートメイカーとしてもLEGENDSクルーの屋台骨を支えてきたELIGH。これは、”とにかく、いつも作ってるから溜まった物を出したかった”と語る彼のインストゥルメンタル・アルバムだ。幻想的でトランスを誘う彼のビートは、多くのビートメイカーが存在するクルーの中に於いても、最もインスト向きであると言えよう。因みに、アルバム・タイトルにあるGANDALFとは、彼の別名。

とにかく良いビートが揃っていて、今まで出し惜しみしていたのかと思う程。個人的な好みでは、うねるエレキベースに絡むハープの音色が美しい”I KNOW GANDALF”、女性ヴォーカル・サンプルと、滑り込んでくるストリングスが鳥肌モノの”MELANCHOLIEST”、全体を左右にパンし続けて不思議な音空間を作り出す”A PLETHRA”、シンプルなトラックを基本にしながらドープな展開を見せる”MY HOUSE”、哀愁漂う”GANDALF’S STAFF”、ムーディーなホーンがイヤラシイ”IT’S NOT WHAT I DO”、透明感溢れる”I CAN SEE THREW YOU”などなど、殆ど全部良いです。

とかくスキルフルなMC陣に注目が集まりがちな彼らだが、このアルバムによってビートにも耳を傾けて欲しい。チープさと上品な透明感を併せ持った、極めてオリジナルなビートを作る人だ。様々な音楽の影響を強く感じさせる彼のような世界観を持ったアーティストの作品こそ、出来るだけ多くの人に聴いて貰いたい。

ELIGH “GASDREAM”

余計なイントロダクション無しで、アルバムのイントロの話へ。

ドープなプロダクションとELIGHのポジティヴな視点によって、”A GAS DREAMER’S INTRO”は最高のイントロダクションになっている。”ACTORS HAVE NO FRIENDS”の信頼についての真摯なリリックもディープだ。SCARUBとの”LIFESIZE PUZZLE”では人生や未来、創造主など壮大なテーマを見事に料理してみせる。凡百のMCには出来ない芸当だ。”SEE THE PRIEST”においてELIGHは、日々の罪を告白せよと促す。ゆったりとしたビートに乗せたELIGHのフロウは正に驚異的だ。自らの母親に捧げた”FORKS IN THE ROAD”は、美しいライムがシンプルなトラックによって最高に映えている。”A STORY OF 2 WORLDS”収録の同名曲の続編”COINCIDENCE PT2″は、同じテーマを扱ったストーリーモノ。”WHAT YOU DO”は、プロダクションもベストの一つだし、何より歌うサビが良い。シンコペイト・ビートの”NIGHTLIFE”もキャッチーで面白いが、BASIKが加わった”ATIQUE REMIX”のレゲエっぽいリズムの方が個人的には好みだ。草ネタ”CHRONIC”は、プロダクションが最高、ドラムも跳ねてます。ライムはアベレージだが、続く”IT’S WHAT YOU RECEIVE”での知的なライム、凄まじいフロウは圧巻だ。

JOURNEYMEN参加の”MINGUS AND ME”は、ダルーい感じが心地良い。ドラムがタイトな”A LESSON GARDEN”は、流れるようなフロウを聴かせるDELとELIGHのクールなフロウの絡みがドープだ。同じくHIEROクルーからPEP LOVEと、お馴染みGROUCHがスムースかつジャジーなトラックでマイクを握る”SOUL MAN”は、プロダクションの良さも手伝ってか、粒揃いのアルバム中でも特に光っている。心地良さでは負けていないSF的なストーリーモノ”MISSION COMPLETE”では、ASOPが粘っこい。そして、ELIGHと共にPSCとREEF-DAWGがアルバムを締めくくる。もったいぶった所の無いイントロ同様、”A GAS DREAMER’S FAREWELL”は唐突に終了する。

プロダクション面で若干当たり外れが激しくなっているように感じるが、ELIGHは真の詩人らしく、聴き手を自身の心へと導いてくれる。フロウも驚異的。曲よってにバラツキはあるものの、これまでワックなアルバムを出した事の無いELIGH。このアルバムで、また自己記録を更新した。

ELIGH “SIDEWAYDAZE”

ELIGH、98年のアルバム。このアルバムでも、ほぼ全曲のビートも自ら手掛け、まじりっけのないELIGHワールドが隅々にまで感じられる。

冒頭の”POSITIVE DREAMS”は、印象的なイントロダクション。ELIGHの、様々な事柄から人生について語る詩的なリリックは、アルバムを通して貫かれている。自伝的な”ONE DAY”では、RICK RICKなるキャラクターを通じて、ELIGH自身の歴史が語られる。初めてのビート製作から、LEGENDSの面々との出会い…素晴らしいストーリーテリング。運命の女性は何処に、と問う”INTRUSIVE LADY”、人生に2度目があったら?そんな誰もが抱く希望から人生を掘り下げる”SECOND CHANCES”、自らを解き放って助けを探せと歌う”PAIN (LET IT GO)”まで、ポジティヴなELIGHの人間性が垣間見れる。他にも、コマーシャルなヒップホップを新たな視点から批判する”MAKESHIFT MESSAGE”、ファンタジックな”THE OWL AND THE RIVER”、電気やガス会社を批判する”ELEC. TRICKMAN!!”、LEGENDSが成し遂げた功績をライムする”99 OUTERS”などでも、ELIGHは常にハズさない。

ビートも勿論フレッシュ。全体に、お馴染みのLEGENDS節全快だが、浮遊感のある幻想的なループに、打ち込み中心のラウドでナスティなドラムが、何とも言えずドープだ。

多作なELIGHだが、アルバムの質には曇りがない。ウェスト・コーストの多用な音楽性を感じさせるビートに、リリカル・コンセプト。文句なし。