多くの優れたフリースタイル・パフォーマー達が、リリックを紙に落とす時点でその魅力を失ってしまうが、SAGE FRANCISがそうであったように、このADEEMもその点では全く問題ないようだ。スクリブル・ジャムで2度のMCバトル・チャンプに輝く天才フリースタイラーADEEM、堂々のオフィシャル・デビュー・アルバム。
彼独特の、ラップと歌の間を行き来する流れるようなデリヴァリーは、冒頭の”SWEET TALK”から全開だ。ゆったりとしたレイドバック・トラック上を無尽に泳ぎ周るADEEM。一転して緊張感溢れる”BROKEN RIGHT WING”ではアグレッシヴなフロウを聴かせていて、引き出しの多さを垣間見せる。時に様々な解釈が成り立つような彼のリリックだが、”YOUNGER DAYS”は明確だ。ここでADEEMは自らの幼少時代についてライム、ノスタルジックに80年代を回想する。MOODSWING9が何とも怪しいトラックを提供した”FADE AWAY (A ROUGH DRAFT)”は、正にマスターピース。オーガニックなサウンド・スケープも言う事ナシだが、主役はやはりADEEMだ。スローなビートに合わせ、時に激しく、時に囁くように、ヴォーカリストとして確実な成長を感じさせてくれる。
DJ MF SHALEM B(ADEEMやSAGEのDJ)、DJ MAYONNAISE、MOODSWING9などを中心に構成されるVINYL MONKEYSは、ADEEMのフレキシブルなデリヴァリーに合わせるかのように音楽的で素晴らしいプロダクションでADEEMをサポート。どれも甲乙付けがたいが、個人的には一曲のみの参加にも拘らずアルバムを最高の形で締めくくるSCOTT MATELICの”STARGAZING”がフェイヴァリットだ。
唯一”CYCLE”がアヴェレージに達していない点を考えても、”SWEET TALKIN YOUR BRAIN”が素晴らしいデビューアルバムである事に変わりはない。特筆すべきプロダクションの数々がでしゃばらずにADEEMの存在感を強固なモノにしているのは、類稀なヴォーカリスト/パフォーマーとしての自身の魅力をふんだんに盛り込む事に成功しているからに他ならない。新たなるマスターピース。
ADEEM “THE FIRST FEW INCHES”
ニューハンプシャーの片田舎出身、ADEEMなる名を持つ無名のMCが一躍”要注意MC”のリストにランク・インしたのには、勿論スクリブル・ジャム98年度MCバトル・チャンプと言う肩書きと共に、この宅禄カセット・アルバムが一役買ったと言える。相棒SHALEMと共に作り上げたこの”THE FIRST FEW INCHES”は、そのタイトル通りスタートでしかないのだが。
まずは”FREEHAND SIDE”は、DJ SHALEMがターンテーブルで刻むオリジナル・ブレイクに乗せて、ADEEMが十八番と言える即興を延々と続けると言う構成なのだが、単純に素晴らしい。それも、ありがちな”パンチラインに次ぐパンチライン”ではなく、コンセプチュアルなテーマを様々なアイデア/デリヴァリーで放出、SHALEMが繰り出す数々の定番ブレイクも、それだけで飽きさせない。後半、ユタのADVERSEとの掛け合いもタイトだ。
さて、”LONGHAND SIDE”だが、こちらはオリジナル録音を収録している。シンプルな”REMEMBER”は、”睡眠は弱さの表れ、だから騒音が俺を寝かさない”といった一節が光るポエテックな一曲。”BLIND WALK”には、DJ MAYONNAISEが混沌としたトラックを提供、ADEEMも負けじとアグレッシヴにライム。疾走するパーカッションがドープな”PULSE”、ホーンが不安を煽る”HYPOCRITE”とダークな曲が続くが、ADVERSEとの”SUB WITE”は一転してユーモラスだ。郊外の白人MCにまつわるコミカルな物語を絶妙のコンビネーションで聴かせてくれる。ホーンがハッピーなムードに拍車をかけていてドープだ。最後は、ALIASが再びダークに締めくくる。サイケ・ロック色の強いALIASのプロダクションは当然のように素晴らしい。
とにかく、”FREEHAND SIDE”におけるフリースタイルが圧巻。その躍動感を”LONGHAND SIDE”でのレコーディング音源に収める事はまだ出来ていないが、練られたプロダクション、コンセプト、そして何より当代随一のデリヴァリーが堪能できる。
まずは”FREEHAND SIDE”は、DJ SHALEMがターンテーブルで刻むオリジナル・ブレイクに乗せて、ADEEMが十八番と言える即興を延々と続けると言う構成なのだが、単純に素晴らしい。それも、ありがちな”パンチラインに次ぐパンチライン”ではなく、コンセプチュアルなテーマを様々なアイデア/デリヴァリーで放出、SHALEMが繰り出す数々の定番ブレイクも、それだけで飽きさせない。後半、ユタのADVERSEとの掛け合いもタイトだ。
さて、”LONGHAND SIDE”だが、こちらはオリジナル録音を収録している。シンプルな”REMEMBER”は、”睡眠は弱さの表れ、だから騒音が俺を寝かさない”といった一節が光るポエテックな一曲。”BLIND WALK”には、DJ MAYONNAISEが混沌としたトラックを提供、ADEEMも負けじとアグレッシヴにライム。疾走するパーカッションがドープな”PULSE”、ホーンが不安を煽る”HYPOCRITE”とダークな曲が続くが、ADVERSEとの”SUB WITE”は一転してユーモラスだ。郊外の白人MCにまつわるコミカルな物語を絶妙のコンビネーションで聴かせてくれる。ホーンがハッピーなムードに拍車をかけていてドープだ。最後は、ALIASが再びダークに締めくくる。サイケ・ロック色の強いALIASのプロダクションは当然のように素晴らしい。
とにかく、”FREEHAND SIDE”におけるフリースタイルが圧巻。その躍動感を”LONGHAND SIDE”でのレコーディング音源に収める事はまだ出来ていないが、練られたプロダクション、コンセプト、そして何より当代随一のデリヴァリーが堪能できる。
DORIAN THREE “THE DORIAN THREE”
スクリブル・ジャムのMCバトル・チャンプADEEM、同じくスクリブルでPEACEとのバトルが思い出深いADVERSE。そんな2人に加え、DJ MF SHALEMがプロダクションを手掛けるのがTHE DORIAN THREE。”良いフリースタイラー”と”良いラッパー”は、必ずしも同義語ではないが、2人は幅広いトピックを扱っていて、結果単なる”パンチラインMC”では無い事を証明するアルバムになった。
アルバムのメイン・サブジェクトは、中流階級ならではの苦悩や問題、何て事のない日常。就職のための学歴だけを目的に大学に来る人間を皮肉った”EXPENSIVE IGNORANCE”、日々の仕事や付いて回る責任からの逃避願望を歌う”DISAPPEAR”、そして、彼らの方向性が最も魅力的に現れているのが、”SUBWITE”だ。サビの”郊外の白人のヒップホップを一番高いトコに持っていこうとしてる”と言うラインが全てを語っている。ここでは、MCとして彼らが経験した周りのステレオタイプな反応をコミカルにライム。ファンキーなビートもドープで、アルバム・ベストカット。
スピリチュアルな”YES YES YES”と”PULPIT BONUS”でも、彼らのリリカルスキルに唸らされる。宗教が、どれだけ大きな位置を占めているかが如実に現れていて、興味深い。知的な所を聞かせる”SONIC PROGENY”では、SHALEMがアルバム一のドラムを提供、後半の女性ヴォーカルやサビのストリングスなどに非凡さを感じさせる。ADVERSEのソロ・トラック”MR BARTENDER”、ADEEMのソロ”MS BARPATRON”、どっちも良い酔っ払い具合だ。
結果的に、トラック、ライム共に高水準で、非常に良いアルバムだ。唯一の欠点は、ヴォーカルが聴き取りづらい音質の悪さだが、それも小さい問題だ。何はともあれ、2人ともソロアルバムが楽しみな出来である。
GLUE “SECONDS AWAY”
ご存知SCRIBBLE JAMを二度も制したラッパーADEEM、THEM BADD APPLESのトラックメーカーであるMAKER、そしてシンシナティのDJ集団ANIMAL CRACKERSの一員であるDJ DQの個性的な3人によるスーパーユニットGLUE。
ADEEMの早口でトラックの上を自由自在に駆け巡るようなフロウは、ATMOSPHEREのSLUGと少し似ているがSLUGほど感情的ではなく、かつ力強さも兼ね備えているところがMAKERのトラックとの相性の良さを引き出している。MAKERのプロダクションはかなり質が高く、アルバムの中で惜しみ無く披露される無数のドラムパターンからは彼のプロデューサーとしての引き出しの多さを感じさせられる。そしてMAKERのトラックに見事に融合しつつ印象的なスクラッチを奏でるDJ DQの存在感は、DELTRON 3030におけるKID KOALAを彷彿させる。アルバムを通して聴くとMAKERのサンプル音かと思いきや、DQのスクラッチだったと気付くことが何度もあった。
3部構成の”WINNERS NEVER SLEEP”は特に素晴らしい。最初のパートでADEEMはボロボロになった自分の家についてライムし、「もう新たな愛を見つけるか生まれ変わるかしかない/部屋の電気は消えかけ/いつもの影が違って見える/床のきしみから悪魔が近づいてくる音が聴こえる/本を読む時一瞬は救われるけど、どの本にも最後のページが存在する/俺は序章を50回も読んだ。何かが変わることを望みながら」と歌っている。次のパートは一転してファンキーな3拍子のビートに変わり、DQの小刻みでリズミカルなスクラッチを交えながら、ADEEMはラップというよりもリラックスした口調で歌いながら心境変化を見せる。そして最後のパートでは「半年経ってやっと頭痛が消えた/俺は背を向けてきた色んなことに対して責任をとる/大人のふりをしてきたことを後悔してる」と振り返り、「この曲がどう思われようが俺の成功は約束されている」と見えてきた希望が次第に確信に変わってゆく様が描かれている。
他にも、LILYと名づけた愛車ホンダ・シビックに対する思いを語る”JUMP IN LILY”、エンディング曲に相応しい壮大なバイオリンのメロディーが耳に残る”HAUNT”など、捨て曲はほとんど無しと言っても過言ではない。アルバム全体を通して、GLUEという名の通りメンバー3人の個性は高いレベルで噛み合っている。
(Ais Duke)
GLUE “SUNSET LODGE”
数々のライブパフォーマンスと2004年のデビューアルバム”SECONDS AWAY”が評判のGLUEの最新作。タイトルの”SUNSET LODGE”は全8曲のレコーディングが行われたMAKERの自宅スタジオの呼び名である。
前アルバムの最終曲”HAUNT”のメロディーがフェードアウトするところから始まり、「私は秋の始まりが好きだ」という中年男の声が入る爽やかなイントロは”SECONDS AWAY”の名残を感じさせる。しかし、次の”STEAL THE CROWN”と”WE NEED A.I.M”では一転してGLUEの新境地が展開される。緊張感のある速めのビートにDQのスクラッチを乗せて始まる”STEAL THE CROWN”は、宗教を口実にして猛威を振るうアメリカ政治を批判していて、ADEEMの言葉も非常に単刀直入だ。「俺達はいつも服従するように教えられてきた/今こそ奴らの言うことに立ち向かわなければいけない」と分かりやすく連呼するフックと、今までのGLUEに無いミニマル感が漂うシンプルなトラックが特徴的である。”WE NEED A.I.M”はロック調のアッパーなギターサンプルが鳴り響き、それに呼応するようにラップとスクラッチにも勢いのある縦ノリなトラックだ。これも同じく政治的な内容で、現在も投獄されているアメリカ先住民の活動家LEONARD PELTIER氏の開放を訴えている(ちなみにAIMはAMERICAN INDIAN MOVEMENTの略で、タイトルは「狙い」という意味のAIMとかけている)。音楽でのアメリカ政治批判は最近多いし、聞き飽きた感があるがADEEMのリリックは賢く、回りくどさが一切無いところが良い。
4曲目からは全体的に落ち着いてくるが、GLUE特有の心地良さを保ちつつ、メンバーそれぞれの進化した姿を味わうことが出来る。”EARLY MORNING SILENCE”のハイライトとも言えるDQのスクラッチは不思議に切なく感動的で、見事なものだ。彼は最も過小評価されているDJの中の一人かもしれない。”HOLDING THE HORIZON HOSTAGE”ではADEEMのラップにいつになく怖さと緊張感が漂っている。夜が似合いそうな”STILL EYES”ではMAKERの流れるように変化するドラムがひたすら渋い。さらにこの曲ではPAUL MORTONという男性ボーカリストとADEEMの掛け合いが見事にトラックに噛み合っている。最後の”AIN’T NOTHING PROMISED ABOUT TOMORROW”と加えて、ADEEMのボーカルは凡人に真似出来るレベルではないことだけは確かなようだ。
“SECONDS AWAY”とほぼ同じものを期待する人には気に入られない可能性もあるが、進化したGLUEのサウンドを堪能するには充分すぎるEPだと言えるだろう。
(Ais Duke)
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