JEL “GREENBALL”

MR DIBBSとの”PRESAGE”にてその名を知らしめ、今やANTICONのサウンドを担う中心的な存在として多大なる尊敬を集めるシカゴ出身のプロデューサー、JEL。曲作りの手法自体は基本に忠実ながら、独特のネタ選びとプログラミングによって強烈な独自性を生み出している。この”GREENBALL”は、サンプラーで数々の実験を重ねる新世紀の天才プロデューサー、JELのビート集だ。

JELのサウンドの中枢に位置するのは、やはりドラムだ。ずば抜けたプログラミングで多くのヒップホップ・ジャンキー達の度肝を抜いたTHEMの”IT’S THEM”のドラムは当然だが、シンプルな”MOTERS RENT”や”TITTIESANDCARPARTS”、”NEAR EAST BOUNCE”、”PED’S PEDASTEL”、”KIT $9.95 (¥783)″などが実に魅力的に響くのは、厳選されチョップされたブレイクを独特のタイミングで細かく打ち込んだドラムが、退屈とは程遠いモノだからだろう。ファンク。

フルートの音色が良い”SUNDAY NIGHT”、緊張感を醸し出す”IN LOVE WITH ANOTHER ROBOT”、類稀な構成力を聴かせる”WANT A CAN OF WHUPASS”、哀愁漂う”98 AT IT’S FINEST”、抑えたドラムにパーカッションがドープな”LONG LOST”と聴き所は満載。DEEP PUDDLE DYNAMICSやSOLEのアルバムでお馴染みのビート達も、MCの不在によって違った側面を覗かせている。

ANTICONが現在のような高い評価を受けるまでになった背景には、極めて個性的なMC達を最高に魅力的に演出してきたJELの存在が大きい事は言うまでも無いだろう。何かとエキセントリックな部分だけが取り上げられがちな彼らだが、JELのサウンドは極めてオーソドックスなファンクを鳴らしている。とにかくドラムの存在感は圧倒的。ヒップホップのサウンド・プロダクションにおけるドラムの重要性を再確認させられる一枚だ。