ILLOGIC “CELESTIAL CLOCKWORK”

“GOT LYRICS?”に続くサード・アルバムなのだが、実際は”UNFORESEEN SHADOW”の直後から書いていたそうで、実質的なセカンドはこっちらしい。

ポエティックなスタイルで名を馳せたILLOGIC、その力は衰えていない。軽くスキルを見せ付ける”BIRTHRIGHT”をはじめ、SLUG演ずる父親との口論を描く”STAND”、同じ女性を題材にした実話”LESSON IN LOVE”と”FIRST TRIMESTER”辺りは、親しみやすいボキャブラリーでさらっと聴かせる。特に、”LESSON IN LOVE”と”FIRST TRIMESTER”は、男同士の与太話的な前者に比べ、後者は妊娠と責任、中絶に至るシリアスな物語で、コントラストが強烈。「絵が千の事を物語るなら、俺は千の絵を描く」という”1.000 WHISPERS”、”MY WORLD”と”I WISH HE WOULD MAKE ME”では、自己嫌悪と信仰についてライム、AESOP ROCKとVAST AIREを招いた”TIME CAPSULE”は、そのタイトル通りタイムカプセルに入れるライムをそれぞれが披露するという興味深いコンセプトだ。

プロダクションは勿論BLUEPRINT。自身のソロ作での的の絞れていない作風は何処へやら、本作では実に充実した仕事振り。ILLOGICのスムースな語り口に合わせてか、タフなファンクを聴かせる”BIRTHRIGHT”、スペイシーな”TIME CAPSULE”、ディープな”FIRST TRIMESTER”、アコギが美しい”MY WORLD”などなど、スッキリと整理されたトラックが並んでいる。

ILLOGICのラップ、BLUEPRINTのビート、どちらも素晴らしく、ILLOGICの最高傑作と言って良いかも知れない。曲順も良く練られているように思う。必聴だ。