J-LIVE “ALL OF THE ABOVE”

“THE BEST PART”とほぼ同時期に届いたこの”ALL OF THE ABOVE”は、本当の意味でデビュー・アルバムと言ってしまいたくなる。その”THE BEST PART”のように今までオフィシャルで無かった感のあるJ-LIVEの評価だが、この2枚のアルバムによって、彼をベストMCの一人に挙げる輩も増えるだろう。オールスター・プロデューサーを迎えた前作から一転、DJ SPINNA、JOE MONEY、J-LIVE本人と、身内で固めている。結果は…..大正解。

一番の注目はやはり、”SATISFIED”だろう。ネクスト・レベルに達した感のあるDJ SPINNAのトラックも言う事ナシだが、世の不条理を歌ったこの曲のセカンド・ヴァースでJ-LIVEは9月のテロ事件の余波に触れ、「あの時警官や消防士が死んだのは悲劇だけど、マジックでは決してない/警察の暴力が消える訳じゃないし/耳の後ろから平等が出てくる訳じゃない/大統領が次の4年をズルして勝っても、二分化した国に違いが生まれる訳じゃない」とライム、過剰な愛国主義に警鐘を鳴らしている。ある種異常な状況にある今のアメリカで、こういった意見をライムする事は非常に勇気のある行動だが、J-LIVEは冷静に自らの考えを述べている。ドープ。

J-LIVEのリリカル・スキルは全く陰りを見せるどころか更に磨きが掛かっているようだ。”HOW REAL IT IS”では、「本の知識の代わりにストリートの知識、でも自分に聞いてみろ/標的が一つでもダーツは二つあった方が良くないか?」と教育が最大の武器である事をライム、あまりにスムースなトラックが心地良い”LIKE THIS ANNA”では、女性に自分を大切にするよう説き「ラフな人生だけど/こういう事を言うほど気にかけてる人間もいるんだよ」と優しさを見せている。他にも、詩的な”TRAVELLING MUSIC”やストーリーモノ”ONE FROM THE GRIOTS”まで、素晴らしいリリカル・スキルを如何なく発揮している。

前作との最大の違いは、アルバム全体の統一感が見事なまでに整っている事だ。王道的なヒップホップでありながら、例えようのない新しさを感じさせるアルバムになっている。J-LIVEは極めて理想的なキャリアを築いていると言えると思う。トラック面も抜かりないし、リリックに関しては、文句の付けようが無い。必聴のマスターピース。