オムニバス “8 MILE”

言わずと知れた、EMINEM初主演映画”8 MILE”のサントラ。今回は、SHADY RECORDS所属アーティストのお披露目ボーナス・ディスク付きヴァージョンをレビュー。

映画同様、サントラの主役も当然EMINEM。まず、アルバムのオープニングを飾る先行シングル”LOSE YOURSELF”が最大の聴き所。”人生に一度はチャンスは来る、逃すな”って感じの、EMINEMにしては珍しくポジティヴなメッセージ。ハングリーなMCの心情描写など、”STAN”以来の傑作と言って良い。ドラマティックな自作のトラックもドープだ。表題曲”8 MILE”にしても、ラストの”RABBIT RUN”にしても、公式通りの出来だが、ドープな事に変わりは無い。疎外感と反抗心が滲み出るライムしかり。

自身のレーベルSHADY RECORDSの面子の売込みにも抜かりは無い。やはり、と言うべきか、EMINEM程の逸材がそうそういる訳も無く、プロダクションにも恵まれず、凡庸な出来。”HOW TO ROB”でシーンの顰蹙を買った50 CENTなどは、キャラ的にいかにも、といった感じだが。OBIE TRICEは、ボーナス盤に収められた”RAP NAME”がナカナカ良いが、その他のアーティストは何処にでもいそうなタイプ。SHAUNTAの”CALIFORNIA”なんて、WARREN Gの出来損ないクローンみたい。

更にヒドイのが外部アーティストの曲で、殆どマトモなのがない状態。JAY-Z、XZIBIT、NASが提供した曲はどれも”テキトー”な感じだし、RAKIMの”R.A.K.I.M.”に至っては、やかましいだけのトラックがRAKIMのラップを台無しにしている。唯一、GANGSTARRの”BATTLE”だけが鑑賞に堪えうるが、それでも近々リリースされるというアルバムへの期待を煽るようなモノではない。

監督がカーティス・ハンソンという事で映画自体には期待しているが、サントラに限って言えば、EMINEMの3曲以外聴くべき曲が見当たらない。”LOSE YOUSELF”だけが救いかも。