AYENTEE “THE MANUAL”

最近になって急激に信頼できるレーベルに成長しつつあるDAY BY DAYから、AYENTEEのセカンド・ソロ・アルバム。

冒頭から、スポーツもダメだし頭も良くないからラッパーになったなんて言ってるAYENTEE。アルバムのほぼ半数はヒップホップに言及していて、例えばアンダーグラウンド論だったり、自主でレコードを出す事の大変さだったり、自称”アーティスト”へのキツい言葉だったり。そんな中、真のファンに捧げた”FAN OF THE AVERAGE FAN”が特に素晴らしい。特別リリシストって訳じゃないけど、こういう題材は流石に説得力がある。それに比べると、所謂”社会派”な曲は、少し説得力に欠けるかな。アルバムを通して一番心に残ったのは、「音楽以外にも仕事は山程ある」ってフレーズだったりする。”FAN OF THE AVERAGE FAN”でも、「下心が無いのが真のファンだ」みたいな事を言ってるし、AYENTEEぐらいのアーティスト(悪い意味じゃない)でもやたら売り込んでくるキッズが多いんだろうか。

さて、このアルバム最大の聴き所は、AYENTEE自身が全曲を手掛けたプロダクション。元々、ジャジーでスムースなサウンドには定評があったが、”FREEST FORM OF MEDIA”のドラムとか、”AVERAGE ALIENATION”のベースの音色とか、明らかに進歩していると言って良いと思う。SANTANAやTOWER OF POWERに代表される西海岸サウンドの伝統を、確実に受け継いでいる。あ、ライナーにはBOB JAMESだのFUNKADELICだの、大ネタ中の大ネタばかりがクレジットされているのに使っている痕跡が全くないので、”ここまで分からないように使ってるなんてスゲー!”とか思っていたのだが、全部ジョークだそうです。

アートワークも含めて、センスの良さが光るアルバム。オリジナリティよりも質で勝負って感じかな。