FIVE DEEZ “KOOLMOTOR”

MCのPASEとKYLE DAVID、音を担当するSONICとFAT JON。最近、急激にプロップスを集めるFIVE DEEZ、待望のデビュー・アルバムだ。EPでも聴けたFAT JONの優れた構成力、サンプルに生楽器を織り交ぜた強烈にヒップホップを感じさせるトラック。このフル・レングスではそれらが数段パワーアップしている。

イントロに続く”LATITUDE”がまず、このアルバムが傑作である事を確信させる出来。涼しげなアコースティックギター・ループが心地よく、グッと広がるサビで完成される。SONICが唯一手掛けた”OMNI”での鳥のさえずりが聞こえる静けさは、パーソナルな語り口と相まって何とも言えない心地よさ。冒頭から引き込まれる”DECAPITATED ORGASMS”は、クリスピーなドラム、サビのホーンと女性ヴォーカル、ピアノとストリングス・ループが清涼感たっぷり。ただ美しい。他にも、ド渋な”INSTRUMENTS OF THE TRADE”、唯一のゲストMC、SHINGO2が日本語でアピールする”SEXUAL FOR ELIZABETH”、スピーディーな”TEN”、イルなドラムに心地よいギターが絡む”PLASMA AVENUE”等、とにかくドープだ。

一曲を除く全てのトラックをプロデュースしたFAT JON。ソロ・アルバム”WAVE EMOTION”を引き合いに出す必要も無く、生楽器を多用した音楽性は極めてインスト向きであると言えよう。その魅力が最も分かりやすい形で提示されているのが、ラストの長編”AFGHANISTAN DAN’S SKATING STAND”だろう。嵐の前の静けさと言った趣の始まりから、変化してゆくビート、疾走するハイハット、漂うフルートの音色。正にフューチャー・ソウルジャズ。”POSSIBLY”では、単なる”4つ打ちの導入”に留まらない視野の広いビートを聴かせてくれる。ハウスがどうとかではなく、飽くなきリズムへの探究心が垣間見れる一曲。重厚な始まりから透明感を増してゆく”SUGAR”、生サックスと生ギターをメインに据えた真っ当な”EVEN”、どれも素晴らしい。

PASEとKYLE(そしてFAT JONも)のラップは、スムースなプロダクションに完璧にマッチしていてタイトだが、このアルバムの真の主役はやはり、FAT JONのプロダクションだろう。J.RAWLSとのユニット3582、別人格MAURICE GALACTICA、そしてFAT JON名義でのソロ・アルバムと、2001年に4枚ものアルバムを出しながら、陰りを見せるどころか素晴らしさを増してゆくプロダクション・スキル。僅か1年で、彼の名は”最重要プロデューサー”としてシーンに定着した感がある。ジャジーながら多様性を強烈に感じさせる彼の透明感溢れるプロダクションは、改めて音楽の素晴らしさを教えてくれる。今という時代性と同時に普遍的な魅力に溢れたアルバムだ。必聴。