SCARFACE “THE FIX”

古くからGETO BOYSとソロでの活動を両立させてきたテキサスのギャングスタ、SCARFACE。DEF JAM南部部門の社長に就いた時は遂に引退かとも思ったが、嬉しい事に7枚目となるソロ・アルバムが届いた。

彼の魅力は、平凡なギャングスタ・ラッパーのライムにはない知性と絶妙のストーリーテリング、溢れ出るような感情、そして説得力に満ちた語り口だ。その魅力は、色褪せるどころか、更に深みを増している。イントロに続いての、ストリート・ゲームにおける心構えを語る”SAFE”からして、説得力が違う。ベスト・トラックの一つ、生まれ育ったフッドを描写する”ON MY BLOCK”は、映像的であるだけでなく、ライムの隅々に生活感が溢れていて、SCARFACEの真骨頂だ。”WHAT CAN I DO”や”SOMEDAY”、”HEAVEN”といったフィーメル・ヴォーカルをフィーチャーした曲でストリートでの経験や世の不条理に対する自らの無力感を語ったかと思えば、”IN COLD BLOOD”や”I AIN’T THE ONE”では容赦ない”ギャングスタ”としての顔を覗かせる。うーん、ドープ。

あと、NASやJAY-Z、WCといった大物ゲストを迎えてはいるが、主役はあくまでSCARFACE。ソロイストのアルバムとしては、理想的なバランスだ。友情と嫉妬を扱ったNASとの”IN BETWEEN US”は、トラックも含めて特に気に入っている。

トラック的にも落ち着いたモノが多いが、それが甘ったるくならないのは、SCARFACEの達観した語り口のお陰だろう。大人のヒップホップ・アルバムと呼ぶのが、似合わないかもしれないが、一番シックリくる。