BUSDRIVER & RADIOINACTIVE with DAEDELUS “THE WEATHER”

BUSDRIVERとRADIOINACTIVEという、西海岸アンダーグラウンドでも特異な個性を持つ2MCの共作、というだけでも興奮させられる。アルバムのプロダクションを一手に任されたのは、ロマンティックなエレクトロニック・サウンドを持ち味とするサンタ・モニカのカット・アップ・アーティストDAEDELUSだ。

このアルバムの特筆すべき点は、BUSDRIVER、RADIOINACTIVE、DAEDELUSという3人のアーティストの相性の良さ。アヴァンギャルドな2人のMCのアクの強さをDAEDELUSのポップなトラックが上手く消化し、結果としてアルバム全体が実験性と大衆性の間で、奇跡的なまでのバランスの良さを保っている訳だ。DAEDELUSのトラックは、30~70年代のポップスや、ジャズ、クラシックの要素を、エレクトロニック・ミュージックの手法で丹念に練り上げたような独特の雰囲気を持っていて、それが時に上品過ぎる(ヒップホップの世界に於いて、センスの良さというのは諸刃の剣だ)嫌いがあるが、BUSDRIVERとRADIOINACTIVEのフリーキーで奔放なパフォーマンスは、そこに極めてヒップホップ的なラフネスを加味する事に成功していると思う。”RAFFLE TICKET BLUES”や”THOUSAND WORDS”といったそれぞれのソロ曲が、どちらもダークな仕上がりだったのも興味深い。知的なんだか意味不明なんだか良く分からない2人のリリックも、DAEDELUSのトラック上では何故か納得がいくような気がするし、正にコラボレーション・アルバムの理想形と言えるのではないだろうか。ドープ!

唯一異色と言えるのが、SHAPESHIFTERSの変態3人が加わった”BARELY MUSIC”で、ひたすらノイジーなインダストリアル・トラックにDJ ESPのスクラッチが飛びまくり、凄まじい事になっているが、最後の最後にアルバムの統一感を崩しているような気がして、勿体無さを感じた。

キャリアのあるアーティストのコラボレーション・アルバムの意義というのは、それぞれのアーティストの個性を生かしつつ、新しい何かを生み出す事に尽きると思うが、この”THE WEATHER”は、それを高いレベルで成功させた稀なアルバム。ポップな音楽性のお陰で意外とリスナーを選ばないと思うし、そういった意味で、彼らにとっても我々にとっても、実に意味のあるコラボレーションだ。