C-RAYZ WALZ “RAVIPOPS”

フリースタイルにおけるユーモア、バトル・ライムでのウィットに富んだパンチライン、病んだ比喩、ハイトーン・ヴォイスから繰り出される巧みなデリヴァリーなど、MCに必要な要素を全て兼ね備えたC-RAYZ WALZ。DEF JUXという最高の舞台を得て、待望のデビュー・アルバムだ。

タイトルそのままの”BATTLE ME”は勿論、先行シングル”THE ESSENCE”などのような、C-RAYZのユーモラスなパンチラインが堪能出来る楽曲も良いが、彼の真価が発揮されるのは、コンセプチュアルな楽曲だ。”PROTECT MY FAMILY”や”3 CARD MOLLY (BX)”では、自らの子供から今は亡き弟や父親まで、家族に対する思いを情熱的に吐露。絶滅寸前と言われるバッファローの視点を通して、ネイティヴ・アメリカンの受けてきた仕打ちや苦痛をライムする”DEAD BUFFALOES”は中でも突出した出来で、独自性に満ちた題材や語り口もそうだが、哀愁を誘うPLAIN PATのトラックも秀逸。ドープの一言だ。ヒップホップがまだ純粋だった頃に思いを馳せる”‘86″や、一流MCをズラリと揃えたポッセ・カット”THE LINE UP”には、ヒップホップそのものの魅力が詰まっている。

このアルバムがクラシック足りえなかった最大の理由は、トラックにある。身内で固めた製作陣の作るトラックは、どれもC-RAYZのライムを持ち上げるのには少しばかり物足りないし、期待していたEL-Pとのコラボレーションが無いのも痛い。唯一、MURSなどでお馴染みのBELIEFが頑張っていて、”THE ESSENCE”などで異彩を放っている。

決して悪い出来ではないのだが、今までの自主盤と殆ど変わらない内容なだけに、もう少し完成度の高い作品を聴かせてほしかった。