C-RAYZ WALZ “THE PRELUDE”

ニューヨークのクルー、STRONGHOLD。ATOMS FAMILYと人気・実力共に双璧を成す彼らの中心人物が、C RAYZ WALZだ。続々と届けられるこういった作品を聞いていると、当地のシーンの層の厚さを思い知らされる。インターネットのお陰か、最近は情報が驚異的な速さで伝わるが、彼とそのクルー、STRONGHOLDが熱心なリスナー達の耳を独占する日は近い、か?

イントロに続いて、定番ビート上でのフリースタイルっぽい”ORIGINAL COPIES”は、軽い肩慣らし。パンチライン。”LONG RANGE”も同じタイプで、キャッチ-。数々のパンチラインに耳奪われる。ジュリアーニ批判”FUCK THE MAYOR”は少しありきたりか。”DEGREES”は宗教や死、人生について。ドープ。続く悲しげなピアノ・ループがドープな”EXPAND”は前の曲と同じようなテーマだが、より深く哲学的な感じのライムをキック。MCとしての懐の深さを聴かせるこの曲がベスト・カット。何故かTRICK DADDYのインストを使った”NANN GOD”は、かなり場違いな感じ。EP唯一の捨て曲。STRONGHOLDの面子に、ベテランPERCEE Pが加わったポッセカット”STUPID DEF”は、80年代に引き戻されるオールドスクール・トラックで、タイト。ポッセカットの在るべき姿。

そして、最後に爆弾が。”GREAT VOICES”は、その名の通り、C RAYZが12分に渡っていろんなMCの声真似を聴かせてくれるのだが、これがとにかく面白い。RUN DMCからX CLAN、KOOL KIETH、SADAT X、EMINEM、ONYX、BUSTAにDMXまで、それぞれのインストに乗せて、完全にカラオケ状態。特に、SADAT Xが激似。元々声質似てるし、何より実に楽しそうである。こっちまで顔が緩みっぱなし。必聴。

彼の魅力を堪能するには、このEPのヴォリュームは明らかに足りないが、実力を知るには十分過ぎる位。フル・アルバムが楽しみな限りである。