CAGE “MOVIES FOR THE BLIND”

COPYWRITEのデビューアルバムに続いてEASTERN CONFERENCEから、新世代変態病気MC(元祖は勿論KOOL KIETH)の代表格とも言える真打ちCAGE、待望のアルバムが遂に。ジャケットの元ネタが分かる類の人間には、堪らないアルバム。

CAGEといえば、まずはクラシック”AGENT ORANGE”だ。もう5年も前の曲だし、CAGEのフロウも若さを感じさせるが、それでも”時計仕掛けのオレンジ”のアレックスになりきってライムしたこの曲のドープネスは、少しも色褪せていない。”人は言う、彼の脳は悪魔に憑かれていると…”というフックがこれほど似合うMCもそういないよね。彼のライムは確かに暴力的で陰湿だが、独特のユーモアを滑り込ませることによって、リスナーを飽きさせない。義父を殺す様を描いた”THE SOUNDTRACK”や自殺に失敗した者達のストーリー”SUICIDAL FAILURE”、精神病院に入ってみせる”IN STONEY LODGE”、彼が見た奇妙な夢を描写する”AMONG THE SLEEP”まで、類稀なストーリーテリングとユーモラスなパンチライン、オリジナルなフロウが冴え渡っている。極めてシネマティックだ。”A CROWD KILLER”に代表される強烈なバトル・ライムに関しては、言う必要はないでしょ。

アルバム唯一のマイナス点は、MIGHTY MIの手掛けたモノに平凡なトラックが多い事だろう。特に、”CK WON”はチョット…。”A SUICIDAL FAILURE”や”CROWD KILLER”が良い出来なだけに、勿体無い。アルバムの質を著しく損なう程ではないけど。

それでもこのアルバムは、CAGEという当代随一のMCの才能を堪能できるエンターテイメントなアルバムに仕上がっている。圧倒的なフロウ/デリヴァリーに支えられた、毒々しいCAGEの世界がたっぷり。