CADENCE “POISONS THE MINDS OF THE CHILDREN”

RAW PRODUCEのMC、CADENCEのソロ・デビュー・アルバム。それにしても、DAY BY DAYは微妙な連中ばかりを集めてくるレーベルだ。

ジャジーなトラックにコンシャス・ライム…あまりに使い古された公式だが、それでもこのアルバムが筆者にとって魅力的なのは、90年代前半のサウンドに対する思い入れが強いからだろうと思う。トラウマって程じゃないが、こういうアルバムを聴くと、そこに広がるのはメジャーもアンダーグラウンドもなかった最高の時代の風景。ノスタルジックになってる訳じゃないんだけど。MCとしてのCADENCEは、物質至上主義やブッシュへの批判、ワックMC叩き、9.11への意見まで、例えばJ-LIVEに代表されるコンシャスMCの家系図の末っ子って感じ。一歩引いて自分の事を見てるような、アーティストである事に自覚的なMCと言った印象が強くて、リリシストと言って良いのではないだろうか。声質やデリヴァリーにもう一押し欲しいところだが、自身が手掛ける全曲のプロダクションは、スムースなピアノに哀愁を誘うホーン、セクシーなヴァイヴの音色など、レイドバックした良い雰囲気を作っている。

あんまり期待してなかったからか、後味の良いアルバムっていうのが第一印象。実にリラックスした作りだ。聴かなくても全く困らないアルバムだとは思うけど、たまーーに引っ張り出して来て懐かしむ、卒業アルバムみたいな一枚になりそうな予感。