CIRCLE OF TYRANTS “CIRCLE OF TYRANTS”

JAY-Zがエグゼクティブ・プロデューサを務めるLYNKIN PARKのMIKE SHINODAのユニット(?)FORT MINORのアルバム”THE RISING TIED”は、先ずゲストが凄い。COMMONにBLACK THOUGHT、JOHN LEGEND….だけでなく、STYLES OF BEYONDにCELPH TITLEDまでが参加。その作風は、単なるミクスチャーではなく、曲によっては現在のアンダーグラウンドヒップホップよりもタイトなアンダーグラウンド臭が漂うのだから、こと「ヒップホップ」を作らせるのであれば、現在のJAY-Zの手腕はやはり相当なものなのだろう。(どこまで関わっているか知らんが)FORT MINORに関しては、05年脱ヒップホップのトップ組、”ELEPHANT EYELASH”を作り上げたWHY?とは出自も作風も真逆なのが面白い。これは、シーン外の人がアンダーグラウンドを保守する構図に見えるのだ。

さて、上の話とは別に、05年の空気としては、メジャーシーンではCOMMONやKANYE、50 CENT、アンダーグラウンドではMF DOOMにDANGER MOUSEや9TH WONDER、FACTORを中核として、神経質で細かいヒップホップ作りに心酔しているきらいがあった。これもやはり、KANYEやJAY-Zの”BLACK ALBUM”が与えたショックの後遺症か、これみよがしな派手さはあまり好まれず、どれだけ緻密に、どれだけ端正に、自分のカラーを織り上げられるかで競いあっているような印象さえもたせた。

しかし、そのような風潮にも、まるで路傍の石仏のように動じないこのCIRCLE OF TYRANTSたるやいなやである。このCIRCLE OF TYRANTSは、PSYCHO + LOGICAL一派が総出を挙げて、男子校の体育教師のような勢いと熱量だけで小難しい話を全て吹き飛ばす。

思えば、これより3年前にNON PHIXIONが”FUTURE IS NOW”を出したけども、PREMIERやPETE ROCK、LARGE PROFESSORなど充分すぎるほど手堅い起用をした上で、ところどころでNECROが変化球を放り投げ、それに東直系のストリクトリーなラップを見事に合わせる、という「正」か「邪」か判別し難いセンスが先ず凄まじかった。結局、どこを目指しているのかもよくわからないその作風は、毎日のようにナードラップが大量リリースされていた背景にあって、その年の作品群の中でも一際鈍い異彩を放ち、マニアを唸らせたのだった。

そして、NON PHIXIONの”FUTURE IS NOW”と同じくその「信念」に揺ぎ無い構成を持つ”CIRCLE OF TYRANTS”は、あらゆる季節が過ぎ去った05年にあって、やはりシーンの流れとは無関係に鈍い光沢をてからす。NECROのプロダクションには、年を経る毎に目新しさが消え、既に2日越しのお茶みたいな渋みさえも滲んできてさえいるけども、しかし彼等のラップにはその「老け」を補って余りあるほどの迫力が増し、妙な説得力さえも帯びてきた。

シーン外の人がヒップホップを守りに介入し、こんな時代の流れに動じないスタイルが目に留まるようになってきた。そろそろ「KANYE以降の流れ」も「脱ヒップホップの動き」も古くなってきたか?

(微熱王子)