OPUS “FIRST CONTACT 001″

デビューアルバム”ARCHITECHNOLOGY “で、一大革命を引き起こしたRUBBEROOM。その後、THAWFORのアルバムでの素晴らしい仕事振りで、FANUMとISLE OF WEIGHTによるプロダクション・チーム、THE OPUSは最も注目を集める存在となった。RUBBEROOMでの退廃的で黙示録的なサウンドから、THAWFORのアルバムで聴けた幻想的な音宇宙。それらの集大成が、このアルバムに詰まっている。

まずは、目玉のインスト曲から。壮大なスペース・ファンク”MIND SURFAS”の肝は、なんと言っても後半の展開だろう。淡々とした前半から一気に広がりを見せる辺りは、正に真骨頂。スネアが耳に突き刺さる。続く”LUNA LANDING”は、控えめなギターがブルージー。飛び交う電子音は、まるで宇宙空間を満たすノイズの様だ。巧みに打ち込まれたドラムが、後半に向けて制御不能に。”ROADS SELDOM TRAVELED”での美しいメロディは、正にスペース・オデッセイといった趣。8分に及ぶ”I COME IN PEACE”では、これといった展開を見せない淡々としたループとドラムが、徐々に心の奥底まで染み渡る。一転してダークサイドへと誘う”FALLEN”の主役は、DJ STEEZOによるスクラッチ。饒舌ではないものの、要所要所で強烈な足跡を残してゆく。ストリングスが美しすぎる”ENLIGHTENED”は、中盤以降の激しいドラム・プログラミングに注目して欲しい。激しいながらも繊細さを感じる細かい打ち込みは、ドラムンベース云々なんて言わせない説得力に溢れたモノだ。ラスト、深すぎるループが全てを包み込む”GUIDE TO THE OTHER SIDE”は、何ともいえぬ暖かさに、ただ酔いしれるばかり。

インスト曲の話ばかりではゲスト参加したMC達に悪いので、そっちの話も。”FIRST CONTACT”は、I SELF DIVINE、MURS、LORD 360の3人によるマイク・リレー。RUBBEROOM直系のハードなストリングスに、このドラム!締めは激しいスクラッチ。今や、そのポエティックなリリックで確固たる地位を築いたAESOP ROCKが、味わい深いデリヴァリーを聴かせる”TAKE ME TO THE BASEMENT”。ゆったりとした美しいループに淡々と打ち込まれた物静かなドラム。”COAST 2 COAST”に収録された”THE OCEAN”にて共演済みのSLUGとの”THE RIVER”だが、残念ながらその傑作”THE OCEAN”を超える事は出来なかったが、SLUGのエモーショナルな語り口との相性は抜群。彼らのコラボレイションは是非今後も続けて欲しい。お馴染みRUBBEROOMのLUMBAとの”LIVE”は、正にライヴ。耳に痛い程の堅いスネアに、LUMBAのアグレッシヴなフロウが映える。KENNY BとRICKY SWORDSが参加した”VETERAN’S DAY”は、THE OPUSらしさをあまり感じさせないシンプルなピアノループで、タイトだが、彼らがこういった曲をやる必要を感じなかった。他の曲に比べて見劣りする事は否めない。

このアルバムは、彼らにとって一つの到達点と言えるばかりか、ヒップホップと言う音楽の持つ可能性を大きく広げる事にも成功している。”ヒップホップ云々以前にまず音楽だから….”といった言い回しをよく聞くが、このアルバムを聴いた後では、”音楽云々以前にまずヒップホップだ”とでも言いたくなる程。ヒップホップは、この世に存在するあらゆる音楽(ジャンルと言っても良いかも知れない)を、まるで広がり続ける宇宙空間の如く飲み込み続ける。THE OPUSの様な存在は、ヒップホップが現代の音楽の中で最もイノベイティヴな物である事の証明に他ならない。