cLOUDDEAD “cLOUDDEAD”

これまで、ちょろちょろとリリースされて来た10インチの数々が、アルバムになった。ODD NOSDAM、WHY?、そしてDOSE ONEというANTICONの変態部門を担当する3人が結成したグループが、このcLOUDDEADだ。典型的なcLOUDDEADのフォーミュラとは、幻想的なサウンド、歪んだドラムに複数のセクションに分けられた構成。DOSEとWHY?の歌うようなヴォーカル。7分前後で統一されたこれらの曲は、今までのヒップホップにはなかった、まったく新しいモノだ。

オープニング”APT A (1)”は、幻想的なループで幕を開ける。汚いドラムがゆったりと入り込むと同時に、DOSEとWHY?の唯一無二のヴォーカルが。ループが変わる中盤からILLOGICが登場、スムースだ。”AND ALL YOU CAN DO IS LAUGH (2)”は、DJ SIGNIFYが擦りで色付けしたインスト・トラック。ファンキーなホーン、緊張感を煽るストリングス。数々のヴォーカル・サンプル。明るいピアノ・ループがDOSEから最高のパフォーマンスを引き出した”I PROMISE NEVER TO GET PAINT ON MY GLASSES AGAIN (1)”には、SOLEが加わり真っ当なヒップホップを展開している。WHY?のハイライトはというと、ゲームサウンドが何故か恐ろしくさえある”JIMMY BREEZE (1)”だろう。後半部分に彼のロック嗜好が垣間見れる。最高のメロディを聴かせる”JIMMY BREEZE (2)”も素晴らしい。それにしても、このスキット!笑えます。インスト”CLOUD DEAD #5 (1)”は、何故かツイン・ピークスを思い出した。正にODD NOSDAMの真骨頂。ツイン・ピークスと言えば、”BIKE (1)”の中盤におけるヴォーカル逆回転も全く素晴らしいし、最後に来て空中分解寸前といった感じの”BIKE (2)”でのアカペラも圧巻だ。

これまで、”SLOW DEATH”や”BLINDFOLD”といったリリースで行われてきた数々の実験が、このアルバムで一つの完成をみたと言えると思う。排他的なアヴァンギャルドさは最早無く、内に内に向った結果突き抜けてしまったかのようなポップさすら感じられる。ヒップホップか否か、みたいな無益な議論はひとまず横に置いて、素晴らしいトラックとヴォーカル・パフォーマンスが詰まったこのアルバムに耳を傾けよう。何かが見えてくるかもよ。