オムニバス “COAST II COAST”

ニューヨークのOZONEが送るオールラウンド・コンピレイション。アメリカ・カナダの実力派が集まっている。

ニューヨークの地下では既に名の知れた強者集団ATOMS FAMILYから、CO FLOWのEL Pの全面バックアップを得たVAST AIRとVORDULのデュオ、CANNIBAL OXは”IRON GALAXY”を提供。スペイシーなEL Pのビート(ドープ!)に、特徴的な声のVASTと凄みのあるフロウのVORDUL。同じくCO FLOW周辺からは、ボストンのMR LIFによる”BECAUSE THEY MADE IT THAT WAY”。盟友AKROBATIKの淡々としたピアノループ上で、ヒップホップの歴史、在るべき姿を知的にキック、燻し銀だ。ニュージャージーのPAUL BARMANは、PRINCE PAULのDELA SOUL時代を思い起こさせる陽気なトラックが良い”SENIORITIS”を。ウィスコンシンのブラス・バンド、YOUNGBLOOD BRASS BANDからは当代一のコンシャス・ラッパーTALIB KWELIを迎えた”STAY UP”。

続くCRYIN FREEMENは、プロダクションを手掛けるMOLEMENのDJ MASSACREと共にシカゴから。悲しげなストリングスに、ハイハットの無いドラムがタイトな”VERBAL REFLECTION”は、渋いデリヴァリーで知的な比喩表現を駆使。ドープだ。

ベスト・トラックは、中西部では絶大な人気を誇るミネアポリスのSLUGと、RUBBEROOMのアルバムでの革命的なサウンドが衝撃的だったシカゴのプロデューサー・チームTHE OPUSによる夢のコラボレーションが実現した”THE OCEAN”。SLUGの味のあるエモーショナルな語り口を、最大限に演出するTHE OPUSの深みのあるトラック。潮の音も効果的。

グッと下に降りて、アトランタからはMASS INFLUENCEによるダンサブルな”ALL OUT”。今回、唯一西海岸はロスから参加したTHE SOLUTIONの”X-5″は、メンバーのAJによるソロ・トラック。現在はカリフォルニア在住のDOSEとJELによるユニットTHEMだが、元々はDOSEはシンシナティ、JELはシカゴ出身。ANTICONの発足に伴ってカリへと移住したらしい。この”MYWAYOUTOFAPAPERBAG”は、2人の才能がガッチリ一つになった変態的な一品。最後は、カナダはモントリオールからOBSCURE DISORDER。ニューヨークのギャングスタNON PHIXONとの共演作”2004″。DAVE ONEのシンプルなトラックでのマイクリレー。そのDAVE ONEの弟、A-TRAKによる小品”Bonus Treats”の驚異的なスクラッチで、コンピは幕を閉じる。

各地から集められたアーティストによるコンピレーションという性格上、仕方ないのかも知れないが、アルバムとしてまとまりに欠ける印象は否めない。しかしながら、各アーティストがそれぞれドープな曲を持ち寄った点、SLUGとTHE OPUSの”THE OCEAN”のようなボーナス的コラボレイションが聴ける点など、コンピ特有の魅力に溢れている。