オムニバス “BENEATH THE SURFACE”

L.A.シーンの中心とも言える、伝説のGOODLIFE CAFEだが、外部の人間にはナカナカその全貌が伝わってこないのも事実。このアルバムからは、そんなシーンの片鱗が聴いて取れる。西海岸の実力派が一堂の会した、正にショウケースとも言える作品だが、主役は全曲を手掛けるプロデューサーO.D.だ。トラック・メイカーとプロデューサーがイコールで語られる事の多い昨今だが、このアルバムでO.D.は本来の意味でプロデューサーと言える仕事を見事にこなしている。

O.D.のビートの特徴は、極めて視覚的な所だ。まず、タイトル曲”BENEATH THE SURFACE”。SURPER NATURALを始めとする強者集団のALIEN NATIONだが、今回は、PHOENIX ORIONとORION SOUTHの2人が参加。とにかく、アメリカの果てしない大地を思わせるトラックが素晴らしく、こんな曲で幕を開けるアルバムなのだから悪い筈が無い、と確信させられる最高のイントロダクションだ。大御所FREESTYLE FELLOWSHIPからはACEYALONEとSELF JUPITER。”WHEN THE SUN TOOK A DAY OFF AND THE MOON STOOD STILL”は、ソウルフルなトラックに載せた寓話。頭とケツを締めくくるSELF JUPITERの凄まじいフロウを堪能して欲しい。とはいえ、心地よいギター・ループに歌うようなサビがドープな、全員が最高のパフォーマンスを聴かせてくれるコンシャスなポッセカット”WHO’S KEEPING TIME?”が前半のハイライト。こういったスケールの大きいトピックを地に足のついた形で聴かせられる所が、彼らの強みだろう。SHAPE SHIFTERSを代表するCIRCUSがフリーキーなフロウを披露する、ハードな”NIGHT AND DAY”、AFTERLIFEのELLAY KHULEの、声を裏返らせながらのマシンガン・フロウに圧倒される”SUNNY SIDE UP”も素晴らしいの一言。落ち着いたDK TOONとのコントラストも良い感じ。

今は亡き相棒YUSEFとのデュオ、THE NONCEで西海岸に新たな息吹を吹き込んだSACHが所属するGLOBAL PHLOWTATIONSから、ADLIB、OKITO、ZAGU BROWNが”SUBTERRANEAN SERVICE”でマイクを握る。うねるベースに最高のドラムが絡むハード・トラック。そのSACHがOKITOに変わり参加した”TO THE TURN OF THE EARTH”は、一転して明るい趣。女性ヴォーカルが良い。貫禄のフロウを聴かせるP.E.A.C.E.のソロは、爽やかな”YOU ARE IN MY CLUTCHES”。ラストの展開が最高にドープ、KUTMASTA KURTがターンテーブルを。

レイドバックしまくった”LINE POSTING IN ‘PEDRO”、やたら遅いトラックでのオールスター・マイクリレー”FARMERS MARKET OF THE BEAST”も面白く、DARKLEAFのH.I.M.N.Lによる最高に心地良いポエトリーリーディング”FOR HER SOULY, SLOWLY, SOLELY”、美しすぎる”(IN)SENSE”等、アルバム中で良いアクセントになっている。

とにかく駄曲は一切ナシ、細部まで完璧な真のクラシック。それぞれの曲の完成度が高いのは勿論、PROJECT BLOWED、AFTERLIFE、SHAPE SHIFTERS、WEST COAST WORKFORCE、ALIEN NATION等、西海岸のヒップホップを代表する多彩な面子をこれだけ集めながら散漫な印象は全く無い。O.D.の、MCの特性を完全に理解したプロデュース手腕が冴えまくっている。ウェスト・コーストのナンバーワン・プロデューサーは、このO.D.だ。断言できる。自信を持って、全てのリスナーにお勧めしたい一枚だ。