DEEPSPACE 5 “THE NIGHT WE CALLED IT A DAY”

WU TANG以降、グループともユニットともクルーとも言えないソロ・アーティストの集合体が増えたように思う。MANCHILD、SEV STATIK、FREDDIE BRUNO、LISTENER、THE RECON、SINTAX、PLAYDOUGH、ILLTRIPP、DUST、BEAT RABBIという大人数で構成されるDEEPSPACE 5も、その好例と言える。やはりMARS ILLのデュオMANCHILDとDUSTが最も名の知れたメンバーだろうが、全員がナカナカのスキルを持っている。

イントロに続いてのタイトル曲”THE NIGHT WE CALLED IT A DAY”は、本当の意味でのイントロダクションとも言うべきドープ・チューン。全MCが参加し自らについてライム、様々なスタイルをディスプレイ。DUSTによるビートもドープだ。アルバムを締めくくる”IF TOMORROW STARTS WITHOUT ME”も印象的。LISTENER、PLAYDOUGH、MANCHILDの3人が死についての思慮深いライムを披露するこの曲は、BEAT RABBI手掛けるシンプルなギター・ループも味わい深く、しんみりとしながらも心地良い後味を残してくれる。

どのMCもそれぞれ高いスキルを持っているが、中でもPLAYDOUGHとLISTENERの2人は、声の魅力、多彩なデリヴァリー、ありきたりな題材を違った角度から面白く聴かせるリリカル・スキルなどの面で頭一つ抜け出しているように思う。トラックも含めてアルバムのハイライトと言える”STICK THIS IN YOUR EAR”、”WORLD GO ROUND”、”IF TOMORROW STARTS WITHOUT ME”の3曲は、MANCHILDと前述の2人による曲だが、MANCHILDは引立て役に聴こえる程PLAYDOUGHとLISTENERが光っている。MC FOGなる人物の手話によるフリースタイルをLISTENERが翻訳するという、類を見ないスキット”CLOSED CAPTION”も面白く、2人共今後ソロも控えているだろうし、要注意だ。

確かに突出した個性を持ったMCがいないせいで、一聴すると人数のわりに地味かもしれないが、聴く人が聴けば彼らのポテンシャルの高さは一目瞭然だろう。プロダクションも粒揃いだし、スッキリとまとまった好アルバム。一部で称されているような”スーパー・グループ”とまでは思わないけど。