DEEP PUDDLE DYNAMICS “THE TASTE OF RAIN…WHY KNEEL”

現在のANTICONクルーの中枢を成すメンバーが結集したユニットが、DEEP PUDDLE DYNAMICS。SOLE、ALIAS、DOSE ONE、唯一SLUGだけがANTICONではなくRHYMESAYERSだが、ともかく、ある程度キャリアを重ねたアーティスト同士がユニットを組むということ自体珍しい。ANTICONが誕生するきっかけとなった作品だけあって、ココには彼らの魅力が分かりやすい形で凝縮されている。

オープニングの自己紹介的な”DEEP PUDDLE THEME SONG”でまずは、全くスタイルの違う4MCの絶妙な絡みに驚かされる。味わい深いSLUG、エッジの利いたSOLE、その2人の中間といった趣のALIAS、そしてDOSEは…..全く別の次元に行ってる。シンプルでロウ・テンポなビートが4人の違いをより明確にしていて、それぞれのビート解釈の違いも興味深い。一転して明るいピアノ・ループが良い”THE CANDLE”、ウッドベースに叩きつけるドラムがハードな”THOUGHT VS. ACTION”、中盤のSLUGが頑張ってる”WHERE THE WILD THINGS ARE”など素晴らしい曲の連続。哀愁漂うトラックがとにかくドープな”JUNE 26TH, 1998″では、4人が入れ替わり立ち代り短いヴァースをキック、繰り返し人生の意味を問い掛ける。”THE SCARECROW SPEAKS”は、最もシンプルながら味わい深いトラックで、最高のマイクリレー。憎しみと愛についてライムするALIASが、個人的に好み。一つのストーリーを4人がそれぞれの視点から語るアグレッシヴな”I AM HIPHOP”でも、ALIASは素晴らしいデリヴァリーを披露していて、ポッセカットの醍醐味を味わえる。ピアノ・ループに乗せてSLUGがスムースに登場する”HEAVY CEILING”では、ループの変化と共に鋭く切り込んでくるSOLEがとにかくドープだ。DOSEがその奇妙なフロウを最も魅力的に聴かせる妖しい”SLIGHT”、ガチャガチャしたドラムがタイトな”EXIST”、女性ヴォーカルが美しい”PURPOSE”、締めくくりの”MOTHERS OF INVENTION”。各曲ごとに溜息が出るほど素晴らしいトラック、ライムの連続。

プロデューサー陣も完璧な仕事で、4人をサポート。どれを誰が、という感じではなく、全員がアルバムとして統一感のあるトラックを提供している。

単純に、音楽的にずば抜けたオリジナリティと完成度であるだけでなく、ヒップホップに新たな方向性を加えたという意味でも、このアルバムは大きな存在感を誇っている。唯一残念なのは、ユニットの性格上セカンド・アルバムは望めない所だろうが、そんな野暮な事は言わずに、目の前の新たなヒップホップ・クラシックに感謝しよう。