ELIGH “GASDREAM”

余計なイントロダクション無しで、アルバムのイントロの話へ。

ドープなプロダクションとELIGHのポジティヴな視点によって、”A GAS DREAMER’S INTRO”は最高のイントロダクションになっている。”ACTORS HAVE NO FRIENDS”の信頼についての真摯なリリックもディープだ。SCARUBとの”LIFESIZE PUZZLE”では人生や未来、創造主など壮大なテーマを見事に料理してみせる。凡百のMCには出来ない芸当だ。”SEE THE PRIEST”においてELIGHは、日々の罪を告白せよと促す。ゆったりとしたビートに乗せたELIGHのフロウは正に驚異的だ。自らの母親に捧げた”FORKS IN THE ROAD”は、美しいライムがシンプルなトラックによって最高に映えている。”A STORY OF 2 WORLDS”収録の同名曲の続編”COINCIDENCE PT2″は、同じテーマを扱ったストーリーモノ。”WHAT YOU DO”は、プロダクションもベストの一つだし、何より歌うサビが良い。シンコペイト・ビートの”NIGHTLIFE”もキャッチーで面白いが、BASIKが加わった”ATIQUE REMIX”のレゲエっぽいリズムの方が個人的には好みだ。草ネタ”CHRONIC”は、プロダクションが最高、ドラムも跳ねてます。ライムはアベレージだが、続く”IT’S WHAT YOU RECEIVE”での知的なライム、凄まじいフロウは圧巻だ。

JOURNEYMEN参加の”MINGUS AND ME”は、ダルーい感じが心地良い。ドラムがタイトな”A LESSON GARDEN”は、流れるようなフロウを聴かせるDELとELIGHのクールなフロウの絡みがドープだ。同じくHIEROクルーからPEP LOVEと、お馴染みGROUCHがスムースかつジャジーなトラックでマイクを握る”SOUL MAN”は、プロダクションの良さも手伝ってか、粒揃いのアルバム中でも特に光っている。心地良さでは負けていないSF的なストーリーモノ”MISSION COMPLETE”では、ASOPが粘っこい。そして、ELIGHと共にPSCとREEF-DAWGがアルバムを締めくくる。もったいぶった所の無いイントロ同様、”A GAS DREAMER’S FAREWELL”は唐突に終了する。

プロダクション面で若干当たり外れが激しくなっているように感じるが、ELIGHは真の詩人らしく、聴き手を自身の心へと導いてくれる。フロウも驚異的。曲よってにバラツキはあるものの、これまでワックなアルバムを出した事の無いELIGH。このアルバムで、また自己記録を更新した。