
さて、アルバムの主役は当然FACTORのプロダクションな訳だが、わずか数年でよくここまで成長したなあというのが第一印象。何より音の鳴りも含めた完成度が格段に上がっているし、サウンドの幅も広がっている。だがそれが逆につまらない楽曲も生んでしまっているのも事実で、派手なホーンが鳴り響く”THE TIME IS NOW”などは、悪くはないが楽曲として面白みに欠けるし、”WHERE I’M AT NOW”ではJOSH MARTINEZの個性を活かしきれていなかったりする。
しかし、BEN.E ELIM、CAM THE WIZZARD、NOLTO、FORGETFUL JONES、KAY THE AQUANAUT、M.PHASISというSIDE ROADオールスターをフィーチャーした”MEDIA SHOWERS”は緊張感のあるトラックが6分を超えるマイク・リレーを短く感じさせるし、演歌的な叙情を感じさせるドラマチックなトラックでEEKWOLが歌い上げる”IT’S ALL HAPPENIN”も素晴らしい。
ベスト・トラックは、DEF 3が時間について語る”OUR GLASS”かな。「過ぎ去るのは時間じゃない/時間はじっとしたままで、過ぎ去るのは俺達の方」という印象的な一節が、FACTORの抑えたトラック上で映える佳曲だ。DEF 3は、オーソドックスなスタイルの正統派リリシストと言った感じで、ソロ作が楽しみな限り。
楽曲の質にバラツキはあるものの、成長をしっかりと感じさせる内容になっていると言って良い。ただ、FACTORの場合は多くのラッパーをフィーチャーしたコンピレーション的アルバムよりも、単独のアーティストと組んだ方が真価を発揮できるタイプのプロデューサーである事は間違いなさそうだ。