ALOE BLACC “SHINE THROUGH”

DJ EXILEとのユニットEMANONで知られるMC、ALOE BLACC初のソロ・フル・アルバム。さて、EMANONの作品でも時折そのノドを披露していたり、アルバムに先行してリリースされた数枚のシングルが歌物だったことから分かっていた事ではあるが、”ソウル・アルバム”になっている。

過去の偉大なシンガーやミュージシャンの名前を列挙する”WHOLE WORLD”から、そこでも名前の挙がっているSAM COOKへ捧げた”LONG TIME COMING”へと繋がっていく冒頭部分が如実に表しているように、先人達へのリスペクトに溢れている。クールで透明感のあるヴォーカル・スタイルは素晴らしいし、スペイン語を多用したり、ラップを挟むタイミングも実に上手い。唯一の純然たるラップ・トラック”CAGED BIRDSONG”がなんの違和感も無く溶け込んでいるし、JOHN LEGENDの”ORDINARY PEOPLE”をスペイン語でカバーした”GENTE ORDINARIA”も最高だ。

OH NOとMADLIBが1曲ずつ手掛けているのを除き、全てのプロダクションをALOE BLACC自身が担当していて、これがどれも素晴らしい。彼が影響を受けたソウルやジャズ、ゴスペル、レゲエ、カリビアンなどのエッセンスが、懐古趣味に陥る事無く凝縮されている。”ARE YOU READY”や”WANT ME”といった現代的なダンス・トラックも良いアクセントだ。OH NOは”LONG TIME COMING”でSAM COOKの魂を現代に蘇らせ、MADLIBは”ONE INNA”で彼独特のユルさを持ち込む。

ヴォーカル・パートからプロダクションまで、ALOE BLACCの才気が如何なく発揮された傑作アルバムだ。彼がここまでオールラウンドな才能を持っているとは思っていなかっただけに、良い意味で驚かされた。傑作。