
ユニット名にHIP HOPと入っているからかどうかは知らないが、この”ALL BEEF, NO CHICKEN”にはヒップホップ・シーンにまつわるライムや引用が多い。特に最高なのが”SUGE KNIGHT”で、ヴァースではヒップホップ・ビジネスにおける葛藤をライムしたかと思えば、サビでは ”クソッタレ、金払え/仲良しごっこじゃねーんだ/シュグ・ナイトのビジネス・センスが好きだぜ” とか言ってて、イルだ。それぞれのソロ曲”HIP HOP SLOTH I”、”HIP HOP SLOTH IⅠ”では、アングラ・キッズ達に軽く説教。ドープ。
それ以外では、GRUFを迎えた”ASLEEP AT THE WHEEL”や”POOR FOLK”みたいな、低所得者ブルースって感じの曲が個人的には好み。ポッセ・カット”STUDIO TIME”も当然のように良い。
このアルバム最大の聴き所は深みを増したMCENROEのプロダクションだ。”ASLEEP AT THE WHEEL”、”STUDIO TIME”、”SUGE KNIGHT”の3曲が良い例だろう、キーボードを用いたサウンド・レイヤーの重ね方など、唸らされる。ディープ!お馴染みのウッド・ベースも、スムースだ。
不満もない訳ではない。このアルバムがPEANUTS & CORN史上最高の傑作となりえなかった全ての責任は、”THIN VEIL”と”AINT THAT HARD TO BITE”の2曲にある。所謂チキチキ・トラックに倍速ラップなのだが、いくらなんでもこの2人には似合わないでしょ!他の曲が最高の出来なのに、勿体無い。
とは言っても、このアルバムが傑作である事に間違いはない。PIP SKIDとJOHN SMITHはリリシスト振りを発揮しているし、MCENROEのプロダクションはいつにも増して魅力的。アルバムが乱発されるインディペンデント・シーンにおいて、これ以上ないオリジナリティを放っている。