ICE CUBE “THE PREDATOR”

“WICKED”、”IT WAS A GOOD DAY”、”CHECK YO SELF”と、ファンでなくとも馴染み深いシングル・ヒットを収録している事からも分かるように、ICE CUBEのソロ3作目となるこの”THE PREDATOR”は一曲一曲のキャラが立ったアルバムになっている。

ロドニーキング事件からロス暴動、ICE T率いるバンドBODY COUNTの”COP KILLER”騒動などの事件後にリリースされただけあって、アルバムは暴動や検閲に関するライムが大半だ。”WHEN WILL THEY SHOOT?”、”WE HAD TO TEAR THIS MOTHAFUCKA UP”、”WHO GOT THE CAMERA?”、”SAY HI TO THE BAD GUY”などでは政府や警察権力は勿論、前作を誌上で批判したビルボード誌の編集者にまで敵対心を剥き出しにし、ロドニー・キングを殴打し後に無罪となった4人の警官とその上司に至っては実名まで出して ”あいつら全員ぶっ殺しちまえ”と容赦ない。

そんな中、CUBEには珍しくメロウな”IT WAS A GOOD DAY”では、誰も殺されず誰も殺さずに済んだ ”平和な”一日をライム、新境地を聴かせる。DJ POOHによるアイズレー使いのトラックも、ダークな曲の多いアルバムでオアシス的な存在だ。

プロダクション面では、前作から引き続きDJ POOHやBOBCATが流石の仕事を聴かせている他、DJ MUGGSがファンキーながらどこか屈折した彼らしい仕事振りでアルバムに良いアクセントを加えている。とは言っても、ICE CUBEの代表曲といっても良い”WICKED”が、DON JAGUARのサビも含めベスト・トラック。

コンセプト・アルバムとして際立っていた前作と比べるとアルバム全体の完成度は劣るが、それぞれの楽曲は明らかに前作を凌駕している。アルバムとして聴くなら”DEATH CERTIFICATE”、曲単位で聴くなら”THE PREDATOR”、という感じかな。クラシック!