MAD SKILLZ “FROM WHERE???”

アングラ・ヒップホップ好きなら誰でも知っている伝説のフリースタイラー、SUPERNATURAL。90年代前半、そのSUPERNATURALと対等に渡り合ったMCが、本作の主役MAD SKILLZ(現SKILLZ)なのだ。本作は彼が1996年に発表したファースト・アルバムで、過小評価されているアングラ名盤の1つである。彼はバージニア州出身で、地元では名の知れたフリースタイラーであった。そのためか、荒削りながらも決して侮れない力のあるライミングを披露してくれる。

この作品の驚くべき点は、無名であったMAD SKILLZに対しての豪華なプロデューサー陣である。90年代を賑わせた敏腕プロデューサー(JAYDEE、THE BEATNUTS、BUCKWILD、NIC WIZ、EZ ELPEE、SHAWN J. PERIOD等)が、多数参加している。これには、彼のフリースタイルでの実力が伴っていると言わざるを得ない。当時のNYヒップホップの人脈の繋がりは素晴らしいもので、作品数が多すぎて評価されにくいというネックがあるが、このような名盤が鶴の一声で簡単に出来上がっていた。それは、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの境がない時代だったからかもしれない。

ファースト・シングル”THE NOD FACTOR”は勿論、LARGE PROFESSORとTHE ABSTRACT(Q-TIP)が参加した”EXTRA ABSTRACT SKILLZ”は必聴である。フリースタイルをしてきたラッパー独特の、枠にはまらない凄まじいライミングを楽しませてくれる。この作品を聴くたび、彼には饒舌家という言葉が良く似合うとつくづく思う。洗練された純正ヒップホップを見かけることが少なくなった近年、多くのリスナーが本作を聴き、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドが乖離されていない時代に想いを馳せてもらいたい。

実際、MAD SKILLZは評価されているとは言い難い。しかし、本作は少なからず、ヒップホップ・シーンに影響を与えている。まさにMAD SKILLZは、レジェンドと呼ばれるべき存在なのだ。この作品のリリース後、客演等でしか彼を見かけることがなかったが、2005年には10年越しにアルバム”CONFESSIONS OF A GHOSTWRITER”を発表し、自分のレーベルまで立ち上げた。彼は、生ける伝説として見事に復活したのだ。今後は、オーバーグラウンド・シーンでの活躍が、大いに見られるに違いない。

(Bil-Vill)