MYSTIC “CUTS FOR LUCK AND SCARS FOR FREEDOM”

西海岸はオークランドのフィーメルMC、MYSTIC。完全に黙殺されている彼女だが、何気に良く出来たデビューアルバムだ。

スキルフルなラップにコンシャスなリリック、所々で披露される巧みな歌、時にはスポークン・ワードもこなす…とかクドクド説明するよりも、一言”LAURYN HILLみたいなアーティスト”で事足りる。別に二番煎じって訳じゃなくて、”GHETTO BIRDS”や”THE GOTTAS”での”近所にチンピラを何とか真っ当な道に戻そうと説得する頼りになる姉御”って感じとか、セクシーに男を挑発する”ONCE A WEEK”とかは、LAURYN HILLにはないペルソナだ。ストリートでもがく人間を描写した”D BOY”と、ストリートで死んでいった若者に捧げた”FALLEN ANGELS”がベストかな。

ラップの方も説得はあるが歌モノも良くて、”YOU SAY, I SAY”が特に気に入った。これが427のプロデュースっていうのも色んな意味で凄いが、単純に楽曲の質が良いです。そうは言っても、”NEPTUNE’S JEWELS”や”A DREAM”などのような、ヴァースがラップでフックに歌を持ってくる形が彼女には一番合っていると思う。”FATHERLESS CHILD”での、母親に育てられたMYSTICの自伝的なストーリーは、その赤裸々な内容が感動的だ。

プロデュースにSPONTANEOUSや427、MOUNTAIN BROTHERSのCHOPS、ゲストにPLANET ASIAなんて名前が並ぶクレジットからは想像できないほど、洗練されたメジャー感溢れるアルバムだ。普通にMTVとかでかかってても、全然違和感のなさそうな楽曲がズラズラと。