OMID “MONOLITH”

フル・インストゥルメンタル・アルバム”DISTANT DRUMMER”で、遂にソロ・アーティストとしてのスタートを切ったOMIDは、インストゥルメンタルとヴォーカル曲をバランス良く収めたアルバムの方が好みだという。MUSHという格好の遊び場で作り上げたセカンド・アルバム。

前作”DISTANT DRUMMER”でエレクトロニカに接近したOMIDだが、今作でも、”ARRIVAL/DEPARTURE”でのヴォーカル・サンプルの加工具合だとか、”UP”のリズム・トラックだとか、”RESEARCH”での奇妙な電子音の飛びモノだとか、アルバムのアチラコチラでその痕跡を聴く事が出来る。ドラムの打ち込み方なども、アルバム全編に渡ってエレクトロニカ以降のサインが隅々まで行き渡っている。が、所謂”エレクトロニカ・アーティスト”のインストゥルメンタルとの決定的な違いは、そうした打ち込みが”打ち込みのための打ち込み”(ややこしいな)になっていない点だろう。”RIPPLE STUDY”での、強引だが自然で効果的なサンプルの挿入の仕方などを聴いていると、これまでのOMIDのプロダクションとの間の溝は予想以上に浅い。本作を聴いて確信したのは、OMIDが遂に自分のサウンドを見つけた事、そして本人もその事に意識的であろうという事だ。”ALWAYS BEING BORN”に込められた深すぎるソウルを聴いて、ヴェテランのジャズマンなどはどのような感想を持つのか、興味深い所だ。

ヴォーカル曲の中で最も自然なのは、HYMNALによるスポークン・ワードをフィーチャーした2曲だろう。ヴォーカル曲では比較的シンプルに仕上げているOMIDだが、HYMNALとの楽曲ではどちらかと言うとインストゥルメンタル曲よりのトラックを用意している。が、個人的に興奮したのは”MYTH BEHIND THE MAN”、”I’M JUST A BILL”、”SHOCK AND AWE”の3曲で聴けるノイジーなプロダクション。新機軸と言ってしまっても良いかも知れない。今後のOMIDの方向性が非常に楽しみになる楽曲だ。

一言で言うと、隙のないアルバムという事。ミックスも最高に良いし、毎回こちらの期待以上の作品を仕上げてくるOMIDの底無しの才能には驚かされるばかりだ。本作でOMIDは、一段飛ばして二段ぐらい上のレベルに上がった。