OLIVER HART aka EYEDEA “THE MANY FACES OF OLIVER HART OR HOW EYE ONE THE WRITE TO THINK”

EYEDEAがOLIVER HART名義で突如リリースしたこのアルバムを聴く前は、どんなアルバムになっているのか興味シンシンだった。だが、いざ聴いてみると、いたって真っ当なヒップホップ・アルバムだった。ラップは勿論、プロダクションまでEYEDEA本人が手掛けたこのアルバム、内容的には”FIRST BORN”に続くセカンド・アルバムと見て問題なさそうだ。

まず驚いたのは、EYEDEAが全面的に手掛けたプロダクションの素晴らしさだ。基本的には別に新しさは何もないが、良質のループとドラムはクルーのトラックメイカー達を凌いですらいるほど。天才的なフリースタイラーであるだけでなく、こんなに良いビートまで作れるとは!多才だ。中には取るに足らないものもあるが、個人的には、心地良いシンプルなギター・ループからフックの展開が素晴らしい”HERE FOR YOU”と、幻想的な大作”HOW EYE ONE THE WRITE TOO THINK”の2曲が特に気に入った。ただ一言、最高!

さて、ラップの話。EYEDEAとOLIVER HARTの間には大きな差は感じられず(実際、OLIVER HARTの名はリリック中も殆ど出てこない)、OLIVER HART名義でこのアルバムを出した事の意味が良く分からないが、まあ、ドープである事も変わりないので、問題なし。「一つの側面だけで俺を判断するな」という”THE MANY FACES OF OLIVER HART”でのメッセージは、”FIRST BORN”をEYEDEAらしくないと一蹴した者に対する反論だろうか。辛辣な”JUST A REMINDER”でも同様の憤りが感じられる。まあそんなにスネないで。死後の世界を描いた”STEP BY STEP”や、性的虐待というヘビーな題材を扱った”BOTTLE DREAMS”は最高の出来で、流石のリリシスト振りを披露。

結論としては、”FIRST BORN”に良く似たアルバムとなった。数曲の駄曲が存在する所まで、良く似ている。これを”セカンド・アルバム”と呼ぶのが適当かどうか分からないが、そんな事は正直どうでも良い。ドープ・ビーツ + ドープ・ライム = ドープ・アルバム。単純明快。