QWEL “IF IT AIN’T BEEN IN A PAWN SHOP, THEN IT CAN’T PLAY THE BLUES”

シカゴのGALAPAGOS 4から、TYPICAL CATSの顔、QWELがソロ・デビュー。同レーベルは、そのTYPICAL CATSをはじめ、OFFWHYTEなど良質なアルバムをコンスタントに発表してきたが、そろそろ、正当に評価されてもいい頃ではないだろうか?個人的には、シカゴのナンバーワン・レーベルであるだけでなく、RHYMESAYERSやDEF JUX、ANTICON等と比べても全く遜色はない、と思うのだが。

ともかく、QWEL。このアルバムの主役は、QWELの幅広いトピックを扱ったリリックと、声の弱さを補うかのように凝りに凝ったバック・トラックだ。細くて高めの声に、鋭いフロウ。TYPICAL CATSのアルバムでの印象は、これと言って特徴がある訳ではないが、確かなスキルでのバトル・ライム。しかし、今回のソロ・アルバムでは、もっと多様なトピックを扱って、ただのバトル・ライムMCではない事を証明している。中でもアルバム唯一のゲストヴォーカリスト、同じシカゴのROBUSTをフィーチャーした2曲、宗教と戦争についての”ART OF WAR”と、中絶問題を扱った”$19.99A.D.”がずば抜けてる。特にトラック的にもベスト・カットの後者は、クラック・ベイビーや中絶を赤ん坊の視点から、淡々と語っている。”僕はママの罪のために死ぬ…”、ド-プ。

トラックは、全体的にダークでダウン・ビート。RUBBEROOMやEL Pに近い、音数が多く近未来的かつ混沌とした感じだが、ドラムはより生っぽいラフさに満ちている。そう、前に挙げた2組のサウンドとの最大の相違点は、そのライブ感、だ。まるで生バンドをバックにラップしているかの様な”STRESS COM”や”MEATY’S LAMENT”、”CHICAGO BARBEQUE”等はその典型。無機的なのに有機的と言うか、独特の雰囲気を醸し出している。

クラシック、とは言い過ぎかもしれないが、聴かないと損をするアルバム、とだけ言っておこう。GARAPAGOS 4はこのアルバムによって、レーベル・カラーがより明確になったと思う。最後にもう一度言うが、シカゴのナンバーワン・レーベルはGARAPAGOS 4である、と断言できる。