WALE OYEJIDE “ONE DAY, EVERYTHING CHANGED”

アルバム”WALLS DON’T EXIST”が素晴らしかった、ナイジェリア生まれのアーティストSCIENCE FICTIONによる、WALE OYEJIDE名義でのデビュー・アルバム。

WALE OYEJIDEは、SCIENCE FICTIONによるジャズ・プロジェクトという位置付けのようだが、実際のサウンドはとても幅広く、ヒップホップやジャズ、アフロ・ビートなどを内包する。SCIENCE FICTION名義の時よりも、より自らのルーツであるアフリカを強く意識しているであろう事はその名前や、”THIRD WORLD ANTHEM”、”IBADAN SUNRISE”と言った楽曲からも窺えるし、自らマイクを握って意識の高いメッセージを歌い上げる彼の姿は、インスト中心だった”WALLS DON’T EXIST”の頃と比べても、成長著しい。ドラム・プログラミングは勿論、作曲能力も格段に上がっていて、唸らされる。

JAY DEEを迎えての反戦ソング”THERE’S A WAR GOING ON”から、民衆よ立ち上がれと促す”RIOT & REVOLT”、故郷アフリカを思う小品”THIRD WORLD ANTHEM”を挟んで、明るい未来に思いを馳せる”ONE DAY, EVERYTHING CHANGED”へと続く辺りの流れは、正に完璧。洗練されているが、同時にエネルギッシュでもあるWALE OYEJIDEの音楽性が、真摯なメッセージをより際立たせている。自らが生まれ育った街を郷愁する”IBADAN SUNRISE”、彼の音楽的ルーツである90年代前半のヒップホップに捧げた”THIS IS DEDICATED TO…”、ラヴ・ソング”KAYA”、”WASTING TIME”、”GIVE IT UP”といったアルバム後半も聴き所満載。

以前、”WALLS DON’T EXIST”を評して「彼に関しては、強烈な個性さえ身に付けば大化けする可能性を感じさせる」と書いた事があるが、本作で既に実現されている。プロデューサーとしては勿論だが、ヴォーカリストとしても個性を感じさせる。捨て曲無し。傑作だ。