3582 “THE LIVING SOUL”

オハイオを代表するグループ、LONE CATALYSTSとFIVE DEEZは、共にそのソウルフルでジャジーなサウンドが高く評価されているが、今回そのサウンドを担うJ. RAWLSとFAT JONがグループを結成した。お互いのベル番である2桁の番号をつなげた、3582という名の付いたこの当代きってのサウンドクリエイター2人のユニット。基本的にFAT JON(35)がラップを、J. RAWLS(82)がトラックを担当している。そもそも、ソウルフルとかジャジーといった共通点はあっても、泥臭くトラディショナルなJ. RAWLSと多用な音楽の影響を感じさせる透明感の強いFAT JONの共作という事でどういったものになるのか興味深かったのだが、2人で作成したトラックは無く少し残念。

FAT JONのラップは、極めてオーソドックスで、淡々とポジティヴなライムをキック。J. RAWLSもマイクを握る”NO NEED TO RUN”での自己改革ライムを始め、シンプルな”THE COLLECTIVE”、ほろ苦い恋愛模様”WHAT COULD BE”、希望に満ちた”YESTERDAY (82 MIX)”、自らの歴史を語る”THE LIVING SOUL”、疾走感のある”BAD FORM”、女性ヴォーカルも心地良い人生の空しさを語る”EMPTY”、どれもスムースで暖かいグルーヴに満ちていて、落ち葉舞う暖かい秋の昼下がりといった雰囲気だ。J. RAWLSのトラックは何処かFAT JONに歩み寄った感がある。奥行きのあるミックスも含めて、以前の作風と比べて多少洗練された印象。

FAT JONファンには、とにかく速い”2ND PERSON”で溜飲を下げるだろう。マッシヴ・ブレイク。”SOUND IMAGING”、”VIVID PROGRAMMING”、”MC2″等のジャジーなインタールード的トラックも高水準。

中でも面白いのは、同じ曲を2人がそれぞれリミックスしたものだ。”NO NEED TO RUN”は、ファンキーなJ. RAWLSにサビのフルートが心地よいFAT JON、逆に”YESTERDAY”では、とにかくスムースなJ. RAWLSに比べFAT JONはバウンシーに仕上げていて、興味深い。

前述したとおり、FIVE DEEZのアルバムに印象が近い。J. RAWLSのアルバムで聞くことが出来た、特徴的なウッド・ベース等はココにはないが、それでも非常に密度の濃い完成されたアルバムである。ポジティヴなリリックと共に、大人のヒップホップとでも言いたくなる様な真摯で洗練されたヴァイヴが全編に渡って漂っている。