ALIAS “THE OTHER SIDE OF THE LOOKING GLASS”

数多くのANTICON関連作でそのビート・メイキング/ラップの才能を発揮してきた男ALIAS、待望のデビュー・フル・アルバムが届いた。個性的な他のANTICONのMC陣に比べると比較的オーソドックスなデリヴァリーを持つALIASは地味に写るかも知れないが、プロダクションの才能も含めて極めてオールラウンドかつバランスの取れたアーティストだ。

このアルバムのハイライトはやはり、ピアノ・ループを中心とした美しいトラックと、プログレ・ロック的な深遠なトラックに分けられる、練りに練られたALIASのプロダクションだ。前者では、お馴染み”WATCHING WATER”の延長線上にある”ANGEL OF SOLITUDE”を筆頭に、独特の浮遊感を演出する”DYING TO STAY”辺りが、後者では、エスニックなインダストリアル・トラック”GETTING BY (VERSION 2)”、DOSEを迎えたフリーキーな”OPUS ASHAMED”、アグレッシヴなドラム・プログラミングが光る”PILL HIDING”辺りが素晴らしい出来。リヴァーヴやディレイを多用し徹底的にトリッピーな世界観を構築していて、ALIASの代表曲でもあるSOLEの”BOTTLE OF HUMAN”に於ける、分かりやすいプロダクションからだいぶ進歩したと言えるのではないだろうか。

彼の詩的なリリックは相変わらず。個人的に気に入ったのは、家族に対する思いが伝わってくる”INSPIRATION’S PASSING”かな。人生と窓を伝う雨の雫を重ねる”WATCHING WATER”は、やはり名作だ。

ゲストMCはDOSE ONEのみ、インストも僅か一曲と予想以上にMCとしてのALIASが前面に出たアルバムとなったが、個人的にはやはりプロダクションを聴くアルバムだと思う。彼独特の世界観は完成されつつある。今後が更に楽しみだ。