ALIAS “THREE PHASE IRONY”

SOLEやDOSEの陰に隠れてあまり注目を集める事の無いALIASだが、ラップ、トラック両面で常に高水準な仕事を聴かせる彼は、もっと評価されても良い。「トラック作りのほうが好きだ」と語るALIAS、アルバムの前哨戦と言えるこのEPでは、リミックスやインストなどが前面に出て、彼のトラックメイカーとしての才能が堪能できる。

まずはソロ曲から。シングルで発表済みの”THREE PHASE IRONY”は、リリシストとしての彼の真骨頂だ。退屈な繰り返しの日々の中で失われてゆく時間。そんな日常からの脱却をライムした傑作だ。独特のドラム・プログラミングに、ヴァースごとに微妙な変化を見せるループもリリックの雰囲気にマッチしている。個人的なベスト・トラックは、エスニックな香り漂う”HEADBUMPS”。ANTICON嫌い達への返答で、SCHOOLY D”P.S.K.”似のドラムも最高だ。ドラムンベース調の”DIVINE DISAPPOINTMENT REMIX”は、残念ながらオリジナルには到底及ばない出来。

続く3曲は、ANTICONクラシックのリミックス。中でも、”SAVIOR”のリミックスは更にダーク、ドラムはよりタイトに。オリジナル以上にラップが映える好リミックスになった。SOLEの代表曲とも言える”BOTTLE OH HUMANS”は、基本的にオリジナルと同じ路線だが、このリミックスの方が若干暖かさを感じる出来。”WE AIN’T FESSIN”は哀愁漂うループに、跳ねるドラムがドープで、プロデューサーとしてのALIASの才能を再確認させてくれる。

そして、ラスト3曲はインスト。”QUITTING TIME”は、跳ねたドラムにヴォーカル・サンプル、ピアノにホーンが一つになって何ともいえぬドープさ。なんと言っても、このドラム!中盤のプログラミングも良い。3曲とも派手さは無いが、とにかくタイトなドラムがリスナーを飽きさせない。

彼の作るトラックからは、強烈な個性は感じられないものの、タイトなドラムの鳴りや独特のネタ使いなどは、既に彼のトレードマークとなりつつある。特に、ドラムに関してはJELにも負けていない。彼は、ラッパーとしてやプロデューサーとしてではなく、全てを含めたアーティストとして評価されるべきだ。是非。