SCOTT MATELIC “PRIMITIVE PESSIMIST”

SOLE、ADEEM、SAGE FRANCIS、MARS ILLなどにトラックを提供してきたインディアナのトラックメイカー、SCOTT MATELICの”アン・オフィシャル”デビュー・アルバム。多くのアーティストのアルバムで、1,2曲のみで強烈に印象に残る仕事を残してきた彼。ご丁寧に”100%サンプリング”と記されたこのアルバムでは、彼特有の美しいサウンドスケープが全開だ。

“BROKEN WINGS”と”STARGAZING”は、それぞれSAGE FRANCISとADEEMのアルバムで使用された同名曲のインスト・ヴァージョンだが、元々映像的な側面が強く美しいとしか言いようのないトラックだけに、ラップが取り除かれた事でより聴き手の想像力を掻き立てる。SCOTT MATELICの作り出すサウンドの最大の特徴は、その美しさだ。主にピアノとストリングスで構築される彼のトラックは、聴き手の心を浄化してくれるかのような真摯な魅力に満ちている。こうした類の曲と言うのは時として甘ったるいイージーリスニングになりがちだが、彼の場合しっかりとしたリズムを刻むドラムが全てをヒップホップに昇華している。

基本的に全曲最高の出来だが、敢えてお勧めを選ぶとすれば、疾走感溢れる”TO IMPRESS THE EMPRESS”から、キーボードが美しいメロディーを奏でる”FINDING AWAY”へと繋がる辺り。とにかく素晴らしいの一言、文句の付けようがない。”CAREFULLY CORDIALLY SUBTLY”では、DJ SHADOWのお株を奪うヴォーカル・サンプルの再構築で唸らせてくれる。2曲収められたヴォーカル曲も良く、THE PHARCYDEのクラシックをリミックスした”PASSIN’ ME BY”は、原曲に違った魅力を付け加える事に成功している。

このアルバムを端的に形容するとすれば、”美しいヒップホップ・アルバム”だ。選りすぐられたサンプルに練られた構成、全てが一貫した世界観を作り出している。必聴のアルバムだ。