SELF SCIENTIFIC “THE SELF SCIENCE”

MC/DJコンビ、ソウルフルなトラック、とくればPETE ROCK & CL SMOOTHを思い出す人も多いと思うが、L.A.の2人組(ラッパーのCHACE INFINITEとプロデューサーのDJ KHALIL)、SELF SCIENTIFICは正にそんなグループだ。

オーソドックスなフロウとコンシャスなリリックを持ち味とするCHACE INFINITEも良いが、このグループの売りは、なんと言ってもDJ KHALILのトラックだろう。ジャジー、ソウルフル、色々形容詞が浮かぶが、そんな枠に収まらない幅を持っている。特にギターとキーボードの使い方が上手く、立体的なミックスも含めて艶のある独特のサウンドを聴かせてくれる。スムースで心地よい。そんな典型的なDJ KHALIL節が聞けるのは、ギターがとにかく心地よい”THE LONG RUN”、KOMBOが参加した”CASH CRAFT”、ギターは勿論フルートまで加わる涼しげな”THE SELF SCIENCE”、サビでの女性ヴォーカルのサンプルが最高にドープな”RETURN”辺りだろう。どれも、ポジティヴなライムと併せて清涼感溢れる雰囲気を醸し出している。その他の曲も強力だ。派手なホーンがドープな”THE BEST PART”は、TOMMY BOYのコンピなどでお馴染みだが、全く色褪せない魅力を保っているし、”THREE KINGS”にはレーベルメイトのKRONDONとPLANET ASIAが、CHACEと共にマイクを握りタイトなマイク・リレーを聴かせてくれる。ノイジーなギターループが遠くの方で鳴り続ける”WE ALL NEED”も面白いが、ベスト・トラックは”LOVE ALLAH”。ここでもギターが効果的で、もはやトレードマークと言っても良いほど。ゲストのKRONDONとの掛け合いもドープで、唸らされる。

曲間に用意されたインタールードの数々も、素晴らしいモノばかりで、飽きさせない。

PETE ROCK & CL SMOOTHを引き合いに出したのは、何も良い意味だけでなくラッパーの押しが弱いという欠点までも似ているからだ。それでも、PETE ROCK & CL SMOOTHのアルバムがどれもそうだった様に、非常に楽しめるアルバムになっている。全体に漂うポジティヴな空気、緻密なサンプリング・サウンドなど、90年代前半から中頃の雰囲気が充満する好アルバムだ。