MURS “RULES THE WORLD”

このアルバムの前代未聞な所は、曲名の欄がブランクになっていて、リスナー自らが曲名を決めて記入する様になっている点だ。何か意図があるのか、曲名を決めるのが面倒くさいだけなのか…。とにかく、MURSだ。これまでも色々なプロデューサーと積極的にコラボレーションしてきた彼、このサード・アルバムではMUM’S THE WORDと大幅に起用している。自分のライム・スタイルに合うビートを模索しているのか?アルバムごとにサウンドをガラリと変える辺りに自信が垣間見れるし、ゲストMCがいない事も、そういった思いを強くしている。

ストリングスがメジャー感を煽る”TRACK 1″での「MURSが世界を制覇する…ただのキャッチーなフレーズじゃない、生き方そのもの/マイクを握れば自信満々」との一節が伊達じゃないのは、知っての通り。MURSがドープなのは、正にリアルだから。とにかくキャッチーな”TRACK 3″の「ナスティに振舞おうとしてる訳じゃない、ただリアルでいるだけ/月曜にはLAWとアリー・マイ・ラヴを見るし」という事。「ナスティに振舞おうとしてる訳じゃない」とは言っても、今までしゃぶってくれた女(特に飲み込むタイミングを分かってる女)に捧げる”TRACK 6″を聴いた後では、説得力を持たないが。ナスティ!かと思えば”TRACK 9″では随分とポジティヴ。そんな所がMURSの最大の魅力で、驚異的なマイク・スキルを別にすれば、彼も普通の人間な訳。そんなMURSのリリカルスキルが最も光っているのが”TRACK 11″。”ラフな男が好き”とのたまう女を殴ったら、余計に興奮させちゃって付きまとわれる話。最高です。実話?

音の面でドープなのは、ラテン風味満載の”TRACK 10″、ダンサブルな”TRACK 3″、アコースティックギターの音色が耳に優しい”TRACK 5″辺りか。”TRACK 12″は、ELIGHによる美しすぎるハープの音色とマイアミベースっぽいドラム・プログラミングが面白い。

わざわざ言う必要もないとは思うが、MURSは相変わらずドープ。だが、MUM’S THE WORDのビートは当たり外れが激しく、MURSのライムを持ち上げるのには少し弱いと思う。前作が完璧に近い完成度だっただけに、ね。次回作はEL-Pとのアルバムという事で、これは期待するなって言う方が無理でしょ。クラシック?