SIXTOO “SONGS I HATE”

カナダの重鎮、SIXTOO。とにかく長い彼のキャリアだが、未だに未開の地へと向おうとする飽くなき向上心はどこから来るのだろう?このアルバムでも又、今までの作品とは一味違ったSIXTOOが聴ける。

アルバム冒頭の2曲に共通するのは、やはりその素晴らしいドラム・プログラミングだろう。変則的な”ONE WORLD LOST”、跳ねまくる”GRIMEY INKS THE MOMENT”。対極的ではあるが、ループとの相性も含めて、ただドープ。ラップも当然素晴らしい。SOLEとSAGE FRANCISが参加した”WHEN FREEDOM RINGS”においても、彼の卓越したドラム・プログラミングが堪能できる。全くタイプの違う3MCにガッチリとはまった最高のトラック。SIXTOOお得意の近未来的なテクノロジー黙示録も、RECYCLONEとの”ALL NEW MAD MAX SONG”で聴ける。沈みまくった小品”TWILIGHT”と”DRIP DROP”に挟まれたポッセ・カット”L.F.T.F.C.G.B.”は、トラックが少し単調だが、メンツのお陰で退屈さは無い。彼の真骨頂は、幾つものパートに分かれたやたら長い曲で発揮される。”WORK IN PROGRESS”では、人生における様々な感情に併せてトラックがダークだったり、明るかったり、アグレッシヴだったりと変化してゆく。個人的にはラストの太陽が昇ってきたようなループがツボ。ドープ。

しかし何と言っても圧巻なのは、35分に及ぶ”THE CANADA PROJECT”だ。ADEEM、SAGE、BUCK 65、そしてSIXTOOの4人がその都度変化するトラックに乗せ、前のラッパーの最後の1節からつなげて違ったトピックへと移行していくというモノで、とにかくこれが凄まじい。SAGEの喫茶店でのナンパ話から、BUCK65の相変わらず「ポルノ映画業界のインサイダーと呼んでくれ」なんて言ってるライムまで、全員が最高のパフォーマンスを披露している。これほどの複雑な曲を指揮/構成したSIXTOOのプロデューサーとしての手腕は相当な物だと思う。この先、おそらく数年は出て来ないであろう超大作。騙されたと思って聴いてみて欲しい。

このアルバムでSIXTOOは、トラック/ラップ両方で最高レベルの仕事を聴かせてくれる。ラッパーとしての彼はゲストに食われる事も多い(勿論タイトだけど)が、プロデューサーとしてはとにかく最高のビーツを叩き出している。これまでの作品に比べ幅も広がったし、全てのリスナーにとって必聴のアルバムだ。