SIXTOO “THE PHYCHE CONTINUUM”

これは、SEBUTONESの相棒BUCK 65にも思う事だが、SIXTOOの底なしともいえる創造性には、とにかく脱帽だ。ラップは勿論トラックも、ほぼ全て自らが手掛けているにも拘らず、その長いキャリアの中で常に高い品質を保ちつつ、コンスタントにアルバムを発表している訳だから、凄まじい創造力である。

細菌によって人類が絶滅してゆく様を描いた”CAUKAZOID GERM”は、ダークながら美しいピアノ・ループも手伝ってか、極めて終末的な雰囲気を醸し出していてドープだ。結局、最後にはSIXTOO一人になってしまうという救いようのないラストだが、不思議と後味は悪くない。唯一のゲストL’RONEOUSが参加した”SUPPORT”は、ドープなベースラインに、SIXTOOとL’RONEOUSの相性も抜群で、ベストカットだろう。”SIMULATED SNOW”という曲名でANTICONのコンピに収録されていた”LACKING PRECIPITATION”は、このアルバムで聴くとだいぶキャッチーに聞こえるから面白い。ここでは、自然破壊の危険性に対しての警告的なライムが主役だ。変則的なドラム、ドープなピアノ・ループと、プロダクションも勿論タイト。ラストを飾る”SULTRY”は、ラップというよりスポークンワードだ。生演奏のチェロが奏でるメロディに聞き入ってしまう美しい曲だ。アルバム中にちりばめられた短いインタールードの数々も、ちゃんとした曲にして欲しいほど素晴らしい物が多く、特に”ALLIGATOR”は突出した出来だ。

全編に渡ってとにかく暗いトラックが続き、SIXTOOの冷たいラップもそれに拍車をかけているため、万人にお勧めできるアルバムではないが、それでも、美しいプロダクション、コンセプチュアルなリリック等、クリエイティヴィティに溢れたアルバムだ。