MR. LIF “EMERGENCY RATIONS”

ボストン代表、DEF JUXヴェテランMR LIFのセカンドEP。

“JUGULAR VEIN”や”HEAVY ARTILLERY”、”THE UNORTHODOX”ではタイトなバトル・ライムを聴かせてくれるが、リリック的な聴き所は”HOME OF THE BRAVE”だろう。政府に物申すと言った感じのコンシャスな内容で、セカンド・ヴァースはテロ戦争に対するLIFの憤りに満ちている。「反戦の声が上がると、政府には民衆の気をそらすモノが必要になった/それが炭素菌/…/戦争を始めるには最適の場所/前から欲しがってた石油が手に入るからな/ロシアを追い出すために、タリバンに武器を/だが北部同盟との内戦で石油どころじゃなくなった/ここで、教科書に載ってない教訓を一つ/アメリカの金に手を出す奴は、殺られる運命」、対テロ戦争の裏にある、米政府が戦争をしたがる真の理由に触れていて、LIFの真骨頂。

さて、以前からMR LIFの作品を聴く度に思っていたのだが、このEPも同様だった。つまり、プロダクションが弱すぎる、という事。LIF自身が手掛けた”HOME OF THE BRAVE”や”JUGULAR VEIN”は聴くに堪えないし、FAKTS ONEによるシンプルな”THE UNORTHODOX”はそれ程悪くはないが、それ以上でもそれ以下でもない。そんな中良い仕事をしているのは、やはりEDANとEL-P。”HEAVY ARTILLERY”と”GET WILD ‘91″でミドルスクール調のタフなドラムを聴かせるEDANのトラックは、LIFと抜群の相性だ。自らもフックで登場するEL-Pは、その”PHANTOM”でいつもながらのデジタル・ビート。イル。

彼のデビュー・フル・アルバムでの最大の課題は、LIFのライム/フロウを持ち上げるだけの力強いプロダクションを揃えられるか、という点に尽きると思う。これまでの作品でも、EDAN、EL-P、INSIGHTなどとは抜群の相性を聴かせてくれただけに、今作のようなアヴェレージかそれ以下の曲は非常に勿体無い。LIFが優れたMCだけに、その思いは尚更だ。