MURS “GOOD MUSIC”

MURS2作目は、LEGENDSの外からTHES-ONEやECLIPSE 427を起用。この選択は、個人的には大成功だったと思う。他のLEGENDS作品にはない魅力を獲得したアルバムであると同時に、MURSの代表作だ。

「ただのグッドミュージックなんだ」と語るイントロ”WHATUPTHO?”に続く、勢いのある”SIMPLE”は軽い肩ならし。冒頭からバトルモード。類稀なストーリーテリング・スキルを披露する”24HRS. W/A G”は、タイトル通り1日の物語。うねるベースに走るドラムも最高だ。ECLIPSE 427がトラックとラップで参加した”ZONIN’”でも、MURS節は絶好調。所謂コンシャス・ラッパーに向けたキツイ一節「MASTER Pの方がよっぽど地域に貢献してるぜ」が個人的にはお気に入り。続く相変わらず強気な”THAT’S HIM”には、ECLIPSE 427の切れのあるスクラッチをフィーチャー。THES-ONE手掛けるファンキーなトラックがやたらドープな”ROOM 3:16″は、何と言ってもドラム!フックのヴォーカルサンプルもドープだし、ELUSIVEによる”ON MYSTICAL WAY”は、美しいホーンと妖しすぎるベースラインのコントラストが面白い。”?QUE HORA ES?”には、再びTHES-ONEが最高にファンキーなドラムを用意。”2 ORIGINAL”の荒々しいドラムもドープだ。

本作と”F’REAL”最も違う所は、バトル中心だった前作に比べ思慮深い曲が多い点。GROUCHが最高のトラックを提供した”ANGELS”では、美しいピアノの音色に負けず劣らず2人の心を打つライムも美しいし、シンプルなピアノループの”RAP ABOVE”では、自分を負け犬と呼んだりと随分自虐的だ。哀愁漂うギターループがMURSの思慮深いリリックを際立たせる”REGRETS?”、人生を顧みる”MY STORY”の抑えたグルーヴも最高に魅力的。ヴァイヴの音色が気持ち良過ぎる”TOMORROW”のポジティヴなライムも、しっとりと染み入る。

L.A.に纏わる3つの物語”L.A. STORY”シリーズの中では、45 ACPによる”PART 1″が特に気に入った。ICE CUBEの声ネタを使いギャング・メンタリティを語るウェストコースト丸出しの”PART 3″も良い。

スキップする曲など一切ない超強力なアルバム。多様性に富んだコンセプトに合わせるかのように、様々なタイプが用意されたトラック。MURSのリリカル・スキル、デリヴァリーは勿論絶好調だ。LIVING LEGENDS関連作でもずば抜けた完成度を誇っている。文字通りのGOOD MUSIC。