BUCK 65 “GAME TIGHT”

カナダ・ヒップホップの中でも変態的な連中が多く生息するハリフィックス。その筆頭はやはり、このBUCK 65だろう。トラックからラップまで全て自分でこなす才人。これは、彼が95年にSTINKIN RICH名義で出したアルバムだ。今の彼からは想像もつかないほど、明るくアップテンポな曲も多いので、聴きやすい。

MCの心得を語る”THREE UP THREE DOWN”からして、ファンキーなベースラインにホーンを使ったパーティー・チューン。ラップは、今よりもストレートでアグレッシヴ。定番ドラム・ブレイクで持ってゆく”EASY TO BE HARD”、メロウなキーボードにホーンがドープな”KICK UP A STINK”、これまた定番ブレイク使いの”CAUGHT LOOKIN’”などなど、何の変哲も無いバトル・ライム。インタルード”JACKIE ROBINSON”を挟んで、ほのぼのしたループが、ある種ネイティヴ・タンを彷彿とさせる”WORK TO DO”、”俺に敵う奴はいないぜ”的なイケイケ・トラックの”I JUST LAUGH”(これがベストかな)、ホーンがとにかくファンキーな”TEN MILES”、当然のようにラストも、”KILLY NEM SEE”のバトル・ライムで締めくくり。サビの声ネタにKRS ONEヤOCを使っている事などからも、彼のスタート地点が垣間見れて興味深い。

トラック的には、これと言ってオリジナリティは無いものの、彼の奇妙な声が耳からこびり付いて離れない強烈な個性に溢れている。これ以降の彼のアルバムに比べて、音的に普通なので、入門用には良いかも知れない。ファンにとっても、素直だった頃の彼の作品を聴くと、今の彼の作品への理解が深まるかも。