COMMON “BE”

付属DVDに収録されているSWAYとのインタビューでは、前作”ELECTORIC CIRCUS”について言及したパートが面白かった。COMMONの周辺での評判は散々だったようで、当時付き合っていたERYKAH BADUがCOMMONの音楽性は勿論、服装まで”コントロール”していたとまで陰口を叩かれたようだ。COMMON本人にとっては、”ELECTORIC CIRCUS”は自分の一部であると言いながらも、自分のルーツから最も遠い所にあるとも認めている。そんな彼にとって、自らのルーツであるシカゴに戻り、飾らないヒップホップ・アルバムを作る事は必然だったのであろう。COMMONの6作目。

ルーツへの回帰が顕著なのが、”THE CORNER”と”CHI-CITY”の2曲だ。シカゴの街角についてライムした先行シングル”THE CORNER”は、KANYE WESTのシンプルなトラック、カリスマTHE LAST POETSの声の力強さ、COMMONの素晴らしい詩とフロウ(特にサード・ヴァース)によって、COMMONの新たな代表曲になるであろう傑作だ。”CHI-CITY”では、自らのリリカル・スキルを誇示し半端なラッパーを袋叩きにしつつ、時代はシカゴだと地元を賛美する。

夢見心地なトラックが良いセクシーな”GO!”からしばらく続くラブ・ソングの中では、殺人罪で起訴された夫を前に証言する妻が主人公の法廷モノ”TESTIFY”が、意外な結末も含め面白い出来。KANYEお得意の早回しヴォーカル・サンプルが効果的。中流以下の普通の人々に捧げた”THE FOOD (LIVE)”(出来ればスタジオ・ヴァージョンを収録して欲しかったが)と”REAL PEOPLE”も素晴らしい。”THEY SAY…”では周囲の移り気な反応に対して、KANYEとCOMONが自分の本音を吐露する。

確かに、KAYNE WEST + COMMONという組み合わせから想像するサウンドそのままであるし、ここに驚きは一切ないのだが、これほどのクオリティの作品を前にして粗探しをするのは野暮というモノだ。KAYNE WESTの地に足の付いた温かいプロダクションは、COMMONの飾らない人柄と絶妙なブレンドを聴かせる。