CONTROLLER 7 “LEFT HAND STRAW”

JELやODD NOSDAMの陰で今ひとつ注目されていない、ANTICONのビート・メイカーCONTROLLER 7。確かに、2人に比べれば地味な存在かもしれないが、このデビュー・アルバムでの確実な仕事振りを聴けば、誰も彼を無視できないだろう。このアルバムは、典型的なANTICONマナーの構成を持ったビート集だ。つまり、短いブレイクやループに、出所不明なヴォーカル・コラージュの数々。王道的なインスト・アルバムとは全く違う、カフカじゃないけど、不条理な世界を構築している。どの曲も、殆どが1分から2分という短さで、どれもが何時間も聴いていたくなる様な最高のドラムにサンプリング・ループ。

全曲にコメントしてもしょうがないので、幾つか。ドラムで言えば、ブレイカーなら自然に体が動く事必至の”MOVIE TRAILER”、後半の複雑なプログラミングが凄い”BUNNY SLIPPERS”、エフェクトが凄まじく脳に響く”FOLLOW THE LIGHT”、何ともいえないキックがたまらない”UNBALANCED”、ドラムンベースもヒップホップの一部である事が分かる”IMPATIENCE”、鳴り物が耳に残る”FINAL CALL”などなど、ヒップホップ好きにはたまらないドラムが次から次へと。

ループに話を移すと、日本的な情緒を持った”STANE”、昔の2時間ドラマとかで使われてそうな”YELLOW”、古典ホラー映画的な佇まいの”THE FOREST”、ラウンジ・ミュージックっぽい”TEST #3″、ヴァイヴが美しすぎる”THE PLACE WHERE SMILES HIDE”、深すぎる”IMAGINATION CYCLE”、ロックな”HECKLES FROM THE PEANUT GALLERY”と、挙げていたら切りが無いほどだ。

DEEP PUDDLE DYNAMICSのクラシックをリミックスした”THE CANDLE”は、決して悪くは無いのだが、ラップとのかみ合わせはイマイチで、オリジナルには当然だが遠く及ばない。他のMCはともかく、DOSEのようにトラックに完璧にハメてくるMCの作品は、リミックスする方にとってやり辛いであろう。そういった意味では、彼は良くやっていると思う。一方12インチに収録されていた”RAIN MEN”は、オリジナルを超えていると思う。特にドラムは素晴らしい。

このアルバムは一曲一曲がどう、というより全体で意味を成すような素晴らしい構成を持ったアルバムになっていると思う。サントラ的というか…マア、なんだかんだ言っても、選りすぐりのループとドラム・ブレイク、凝ったプログラミングと構成、そしてヒップホップの根源ともいえる実験性に溢れたアルバムだ。