DARKLEAF “F… THE PEOPLE”

L.A.では伝説的なUNITY COMMITTEE。後に分裂したこのクルーの一つの側面は、JURASSIC 5としてメジャーに浮上した訳だが、残りのメンバーLONGEVITY、JAHLI、KEMIT、METALOGIK、そしてBREAKESTRAの声としても有名なDJ MIXMASTER WOLFの5人が結成したのが、このDARKLEAFだ。オールドスクールな集団掛け合いとブレイクを持ち味とするJURASSIC 5と比べて、DARKLEAFは陰の部分をリプレゼント。オフィシャル・デビューアルバムはUBIQUITYからとなった。

このアルバム最大の特徴は、LOMGEVITYとJAHLIの作り出す不気味なプロダクションだ。ギターが鳴り響く冒頭の”ECLETIC STORM”がアルバムのトーンを決定付けていて、続く”WORD BOUND”も同様にシンプルなループに定番ブレイク、妖しいピアノが言われもない不安を掻き立てる。DJ MIXMASTER WOLFの形容しがたいスクラッチも不気味の一言、ハードな”CONTACT”、崩れる寸前の奇妙なグルーヴが面白い”COMMERCIAL”などなど、新鮮なトラックがこのアルバムを唯一無二なモノにしている。何の脈絡もなく挿入されるギターやホーン、不自然なまでの唐突な抜き差し、一歩間違えば酷くなる微妙なラインを絶妙なバランス感覚で素晴らしく仕上げている。ライナーにはSUN RAやJIMI HENDRIXの影響を受けたと明記されているが、それらのアーティストの持つ空気感をココまでヒップホップ・フォーマットで表現出来たグループは中々いない。特に、電子音やマッシヴなドラム、ラフなスクラッチが混沌とした世界を作り出す”FRAME THE VOID”などは、唸らされる。当然だが、自主版だった前作よりも音質が格段に向上した事もそうした世界観を強固なモノとして印象付けている。洗練とは無縁だが。

LONGEVITY、JAHLI、KEMIT、METALOGIKが担当するラップだが、トラックに負けず劣らず、こちらも全く感情を排した語り口でアルバムを覆う不気味な雰囲気に拍車をかけている。ビートや曲構成を殆ど無視して我が道を突っ走るラップは、それだけで新鮮な響きを帯びている。人数の割にそれぞれのメンバーに個性があまり無い為、時に誰が誰だか分からなくなる事もあるが、アルバムの質を貶める類のモノではない、とだけ言っておこう。

”新しいアイディアは出尽くした”と言われて久しいヒップホップだが、こうしたオリジナリティ溢れたアルバムを聴くと、まだまだ出来る事は沢山あるな、と思わせてくれる。MC達に不満がない訳ではないが、それを補って余りあるプロダクションの充実度。EL-PやSAGE FRANCISに次ぐ、2002年上半期の重要リリースの一つだ。